ーーーペカド区ーーー
今日は1ヶ月に1度ある冒険者になるための試験がクルス区の冒険者の塔の前で行われる日、なのだがーーー。
「ヤバイヤバイヤバイ。遅刻だ!」
軽い武装を施したオルクス・アルデバラン(orcus・aldebaran)はペカド区の大通りを軽快に駆け抜けていた。
グレムリンを横切り、ウォーウォルフを追い抜き、エルフに目を奪われる。
そう、ここは多様な種族が存在する世界。
そしてその者たちは皆、それぞれの夢を抱いて天国と地獄に伸びると言われる冒険者の塔へと向かう。
オルクスもその一人である。
よそ見が過ぎたオルクスは曲がり角のところで少女にぶつかった。
「……うわっ……!」
「きゃっ!」
互いに尻餅をついたが、オルクスは弾かれたように立ち上がった。
「ごめんなさい。先を急いでいるもので」
相手に言葉を発する余裕も与えずにオルクスは一礼して走り去った。
「フンッ! 失礼な小僧ね。覚えてなさいよ!」
やがて転けた少女も立ち上がりオルクスと同じ方向へと走っていった。