「そいつは孫娘のリツだ。他人の心を読むことが出来る」
湘南にほど近い神奈川某所、郊外にたたずむ古びた洋館。
館に住むのは富豪の老人・黒川蔵人と、十五歳になる彼の孫娘で他人の心を読むことのできる少女・リツ。
『僕』はその館に、住み込みのお手伝いとして勤めることになる。
他人を信じることなく、館にこもったまま資産を増やし続ける蔵人老人。
感情を見せることなく、ただ老人の『嘘発見器』として傍らに佇む少女リツ。
始めはとまどう『僕』だったが、やがて、心を読まれながらの館の生活にも慣れて行く。
そんな『僕』に、ある日、リツが問いかける。
「……私が怖くないんですか?」
正直に「怖くない」と答える『僕』に、リツは予想外の反応を見せた。
「……あなたみたいな人は、初めてです……辞めないで、下さいね」
そう言って――はにかんだような、愛らしい、笑みを浮かべたのだ。初めて見せる、感情を露わにした彼女の表情。
「……うん。辞めないよ、リツちゃん」
リツに認められたことが嬉しくて、『僕』は笑顔で頷いた。
――後になって知る。
彼女のその一言が、恐ろしい出来事の始まりだったのだということを……
※プロローグ+全三章
※ヤンデレものです
サスペンス サイコホラー シリアス ダーク 現代 超能力 ヤンデレ 三角関係 執事 メンヘラ 女子中学生 女子大生 洋館
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