夢に入り込み、依頼者の記憶を見つける「ユメオイビト」と夢の中で道具を具現化するユメオイビトの相棒である「具現家」その職業は人々の暮らしを豊かにしていった。それと同時にユメオイビトの地位も上がり、次第にユメオイビトが社会に影響を与え始める。ユメオイの最盛期のある日。ユメオイのシステム「フリーダム」の回線がオーバーヒートをおこす。ユメオイを行なっていたユメオイビト、依頼人、具現家の多くが現実世界に戻ってくることはなかった。少数の腕利きは、帰還に成功をしたが、記憶の一部が失われていた。これがユメオイ史上最悪の事故、“虚無の夜”である。
“虚無の夜”以降、ユメオイは禁じられ、ユメオイビトはその地位を奪われていった。
あれから十年。かつてユメオイビトとして名を馳せていた東堂は佐藤潮音に現在は禁止されているユメオイを頼まれる。しかし、パートナーとして選ばれたのは人の言葉を理解できないゴリラだった。
一方、街のいたるところで、頭部が突然爆発する『頭部爆発症候群』を発症する人々がいる。田中修司刑事は、病を人為的なものであるとみなし調査を行なっていた。発症する人々は皆一様に、夢で白黒の夜叉を見たというのである。
ゴリラのベンとの協力により、依頼者の謎を解くことに成功した東堂は潮音の中から依頼とは関係のないピースを得ることになる。そのピースは東堂が“虚無の夜”によって失われていたパートナーの記憶を一部取り戻すことになった。
依頼者の夢を追うことによって徐々に明らかになる“虚無の夜”で奪われた記憶。十史は自分のパートナーであるヨルベ真香の存在を突き止め、真香が“虚無の夜”を巻き起こした張本人であること、そして夢の世界に取り残され、人々の夢の中で強力な力を手にしていることを知る。頭部破裂症候群はヨルベによって引き起こされていたのである。人々の脳の限界を超えて具現を行うことができるため、やがて虚無の夜をもう一度引き起こす原因となる。そしてそれは、佐藤潮音の思惑である息子の記憶を取り戻すことに利用されるのであった。かつてのパートナーの暴走を止めるため、多くの人々の命を助けるため、十史とベンはユメオイを行うのであった。
潜入ゲーム 記憶 アイデンティティ
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