主人公明子(私)は、コンビニでバイトをしている時に、毎朝同時刻に同じ品物を買う青年に出会う。
まもなく、明子はコンビニをやめ、ある建材会社に就職したが、ある日たまたまそこで、仕事のことで来店したその青年に再会する。尾野晃というその青年は、建築会社で修行中の大工だった。
明子は、貧しい家庭に育ち、アルバイトや腰掛けの就職で生活費を得ながらも金使いが荒く、ほぼ文無しと言っていい。
一見美人で、ひと通りの理性も常識も有しているように見えながら、子供時代の貧困のトラウマから、ことお金に対しては異常な執着がある。
一方晃は、吝嗇家の家庭に育ったしまり屋で、かなりの蓄えを有している。学校の成績は悪く、高校を一年で中退。頭は悪いが、お人好しで誰に対しても優しく、人を疑うことを知らず、何事に対してもきまじめに取り組むものの、子供のように純真無垢な性分のまま大人になりきれていない。
そんな二人は交際を始めて結婚するに至るが、この二人は性格をはじめ、何からなにまでが正反対の極に位置する特異なカップルといえた。
育った環境も、性格も百八十度違う二人が、片田舎で繰り広げられるノーマルとアブノーマル、道徳的と非道徳的、浪費家と吝嗇家、常識人と非常識人といった現実社会における対照的な人間模様を、自分たちの夫婦生活にからませながら、主人公明子(私)の目を通して描く。
結婚後も、社会生活を送る上で大人になりきれていない晃は、給料も預金もすべて明子に任せ、自分は小遣い生活で満足する。一方、常に一段上の生活にあこがれる明子は経済的主導権を握ったことから、晃を誘導するようにして車は次々に乗り換え、住まいはアパート暮らしから念願の一戸建てのマイホームを購入してその欲望を満たす。
物理的に大きなものの購入に関しては、明子も晃に相談を持ちかけ、晃も一緒に満足感を得られるようにステップを運ぶが、自分の身に着けるだけの宝石類などは、モノが小さいだけに独断で自分一人の世界の満足に浸っている。
二人の関係は、十年後経済的裏付けが底を尽いた時点で、その結婚生活は破局に向かう。
そして奇しくも、時を同じくして晃の母親が病に倒れるという不幸が重なり、家族の破綻が意外な方向へと展開して行く。
※ 自費で300部出版済 平成25年9月末現在で国会図書館ほか 世間 に130部配付済