西暦2015年。日本に、ひとつの構造改革特区が産声を上げた。
その名は、『政府指定特別区域』。
かつての“治安大国”が往時の力を既に失い、止められぬ社会不安が、人々の心に少なからぬ影を落としている。
窮した政府は、都心に程近いベッドタウンであった土地を丸ごと買い上げて、法にも裁ききれず刑務所にすら収監し切れぬひとでなし共を、永遠に放逐するための“夢の島”を造り上げた。
様々な思惑と数多の権益に支えられ、底知れぬ憎悪に囲まれて、悪しき構造改革特区は今日も営々と命脈を繋ぐ。
そんな強化鉄筋の壁を守る、かれらは『境界警備隊』。
陸海空のどこにも属しきれない、JSDFから引き剥がされた身の上。
停滞した日常を、それでもかれらは隊規に則り営んでいく。
そんな強化鉄筋の壁の中に住まう、かれらは『楽園の子供たち』。
政府指定特別区域成立後、壁の中に移り住んだ人間たちが成した、
日本を知らない第二世代。
煮立った毒のような日常を、それでもかれらは営んでいく。
それが自分たちの正気を保つ、唯一の手段だと信じて。
彼の名は聡太。
彼女の名はアキノ。