ここは能力者と無能力者が共存している世界…
そしてこの世界では魔人と呼ばれるものがいた。
魔人とは元は人間だった。
ある1人の人間が力を求めすぎたために悪魔との契約を結ぼうとした。
しかし、契約は失敗…その人間は肉体も精神も悪魔に乗っ取られてしまった。
これが一番最初の魔人である。
悪魔とは元は影の存在…人間の黒い心の中に住まう者であり、本来自分の肉体を持つ者ではない。
しかし肉体を手に入れた悪魔は爆発的な力を得てこの世を支配し始めた。
魔人の力は能力者よりはるかに上回る力で、自分に反論する者を能力の有無関わらず、片っ端から殺していった。
これにより、日々人間達の恐怖という負の感情が積み重なっていき、1人…また1人と次々に悪魔に精神と肉体を乗っ取られ、魔人となる者が次々と現れた。
これにより、全世界の人口の3割は魔人となってしまった。
しかし、そこに1人のある能力を持った青年が現れた。
彼は狂気に満ちた顔で悪魔達をどんどん殲滅していった。
その容姿から人々は悪魔に敵意を向ける悪魔なのではないかと思い始めた。
それは間違いではなかった。
ただ正解とも言えないものである。なぜなら彼は完全な魔人なのではなく、一時的に悪魔に肉体と半分の精神を渡したからだ。
正しくは、一定の時間内で肉体と精神を悪魔に渡すかわりに自分の強い信念だけはその悪魔に引き継がせるというものだった。
彼の能力とはそういう能力であった。
そしてその強い信念とは無論、悪魔の殲滅である。
悪魔は元は心の中に居るものである。
だからその信念の強さが魔人の強さに比例する。
その青年の信念はよほどものだったのであろう…どんな魔人も寄せ付けず圧倒的な力で全ての魔人を滅ぼした。
いや正しくは1人を除いてだが…
魔人の強い信念は悪魔を殲滅すること、つまり自分も含まれるのである。
自分以外の悪魔を全て殺した魔人は元の人間には戻らず最後に自らの腹に刀を突き刺し命を経った。
これ以降、魔人は1人も現れず平和な時を過ごして約1000年の時が経った・・・
バトル 恋愛 ドラゴン 魔人 異能
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