『黛 綾乃』は『楠 大樹』にとって高校受験を共に戦う盟友だった。受験を目前に控えた塾帰りのコンビニで大樹が手に取った雑誌の巻頭カラーを飾っていたグラビアに癒されていると、横合いから冷たい眼差しが注がれていた。綾乃だった。思春期真っ盛りの中学生女子の前で際どいグラビアをガン見するなんて無神経だと反省した。そして1年と少々の月日が流れた。無事に志望校に合格して二年生に進級した大樹が深夜のコンビニで手に取った雑誌には、やはり極小の水着で肌を隠した(隠してない)グラビアアイドルが満面の笑みを浮かべていた。見るからに柔らかそうな大ボリュームの胸、贅肉ひとつ見当たらないお腹、キュッとくびれたウエストを経て長い脚に続く見ごたえたっぷりの絶妙な曲線。見覚えのある整った顔立ちに浮かぶ眩しい笑顔。何もかもが最高だ。でも……癒されない。胸がモヤモヤする。『何見てるの?』と横合いから聞き慣れた声。顔を上げた大樹に向けられた眩しい笑みは、手元の笑顔と寸分変わらないものだった。❇︎この小説はカクヨム様にも掲載しています。
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