この世界は、残酷だ。
僕が切望するものばかりを奪っていく。
一縷の希望に縋る僕を見下して、嘲笑う。踏みにじり、嗤う。
よぞらと一緒にいられるならば、それだけでよかったのに……。
――世界は、それを許さなかった。
素朴な幸せに包まれて日々を怠惰に生きていた青年、美雪。彼を恋い慕う少女、よぞらとの同棲生活は、平平凡凡。日々に、唐突な変化はなかった。
それでも、二人は幸せだった。
他に望むものなんて、何もなかった。
この日々が、永遠であればいい。それが、無欲な二人が望んだ、唯一の願いだった。
――それでも、この世界は残酷だ。
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