「順番なのでこうして喋っていますが、私の話は怖くありません。いえ、ちょっと不思議な出来事で、聞く人によっては怖いと感じるかも、です。ただ、私にはちっとも怖くないのです」
夏の夜、とある集まりで一人ずつ怪談を発表していた。
各々がとっておきの恐怖体験や人から伝え聞いたという奇怪な話を語る中、次に順番の来た若い女性がそんな風に話し始めた。
注目されて照れながら彼女が語るのは、数年前に海外を長期間旅行した際の体験談だった。
旅行での日常が控えめな口調で話されてゆく。
彼女の言う「ちょっと不思議な出来事」とは何か、徐々に明かされていった。