「夢は神様になって、好き放題することです」
青年の、無謀で狂気的な夢への道は、あるゲームとの出会いをきっかけに動き出す。
究極のクリエイト系VRゲーム「ANOTHER WORLD」。
出所不明のオーバーテクノロジーが導入されたそのゲームでは、現実と区別が付かない水準の「異世界」を創ることができる。そこでは、人と同じような知性と感情を持った異世界人が日々を営み、空想上の生物が大地を闊歩している。まさしく、もう一つの「世界」そのものである。
青年は歓喜した。
この世界では、青年の行動を咎める者はいない。
その気になれば、現実世界でやりたくても出来なかった、あんなことやこんなことができるのだ。
それから丸3年もの歳月をかけ、この上なく緻密に「創世」した青年は、自ら生み出した仮想世界「アースガルド」に降り立った。
人の姿をした神様として、欲望の全てを満たすために。
ただひとつ、青年には誤算があった。
余りに精巧に作られた異世界の住人は、青年の予想を遙かに超え、名も無き悪神の存在を感知していたのだ。
彼らは準備していた。
いつの日か降り立つ悪神を打倒し、世界を魔の手から救うために。
そうとも知らず、青年は仮想世界の大地に降り立った。
「ククク。手始めに何をしようか。秘密結社の総帥に、悲劇の悪役ごっこ!
国を乗っ取って独裁者になるのもいい! 平凡なモブとの二重生活も捨てがたい! あ゛あ゛ぁー! 夢が広がるぅぅぅぅぅううう!!!
・・・・・・オホン。でもまずは、腹ペコの女の子にお腹一杯ご飯を食べさせてあげよう」
これは、ひねくれ者でツンデレ気味な神様と、彼が創り上げた世界の物語である。