20××年、ヨーロッパ。
社会の科学化と発展が著しく進む中、ある時、ある土地で、不可解な病が流行していたことが発覚した。それは何らかのウイルスによってもたらされていた。このウイルスは、村の1つや2つを安易に死村にし、都市の郊外でも、ウイルス感染者らしき死者が現れ始めていた。
一体誰が持ち込んだのか、誰が流行を始めてしまったのか。最初の村が死んだと発覚して数年、ようやく正体が解り始めたこのウイルスを、人々は『パンドラ』と呼んだ。
『パンドラウイルス』――一度感染してしまえば、感染者には死以外の選択肢は与えられない。人であれ、動物であれ、感染した者を身体の内部から破壊し、細胞を喰らい、脳に侵入し人格を狂わせ、体力を吸収し、最終的には如何なる形であれ死をもたらす。
人々は何も出来なかった。ただただ、自分はいつ感染して死んでしまうのかという底無しの恐怖に震えていただけなのであった。
『パンドラウイルス』がヨーロッパから世界に流行して数十年、国連は決死の覚悟で、とある計画を提案した――『パンドラウイルスキャリア処刑制度』。
それは、パンドラウイルスに感染した者、感染したと疑われる者は発見次第、即処刑されるという、残酷な制度。
Pandora Virus Executioner Qualification――PVEQ(ピーベック)と呼ばれる彼らは、パンドラキャリアを処刑し、人々に幸を与える者として謳われた。しかし、所詮人間である彼らも、任務を遂行する内にパンドラに感染し、命を落とすことも少なくなかった。
人を救う為に自らの命を懸けるのか、自らの命の為に人を殺すのか。
残酷にして、「人ヲ救ヒ己ヲ犠牲トス」果敢なる者。
これは、彼らのイノチの物語。
作品情報
ノンジャンル[ノンジャンル]
R15残酷な描写あり
最終更新日:2015年07月02日
近未来 男主人公 シリアス 創作
読了時間:約19分(9,342文字)