北東に巣くう極悪非道なドラゴンによって都は無残にも焼け落ちた。
不幸中の幸いながら、大惨事に乗じて攻めてくるような隣国はなく、貧民街の治安も保たれている。
ならば、常備軍一万人。その全てを悪竜に向けて投じることができる。
王は、残虐な計画を立てた。
後にいかなる竜よりも悪辣と伝えられる「水滴作戦」であった。
―――作戦内容は単純だ。
英雄のみが倒せるという竜であっても、凡夫の手によって傷つけられないわけではない。
なぜなら、確かに王は見た。
崩れゆく白亜の城に紛れ、悪竜の脚から血が流れゆくのを。
そう、それならば、そうだからこそ、水滴が岩を穿つように、気の遠くなるまで打ち続ければよい。
水滴を、すなわち人の生を、ドラゴンの鱗に刻みつけるのだ。
岩は砕かれ、水は地に吸い込まれ見えなくなるが、川は流れ続ける。
人の世は続く。
作品情報
ローファンタジー[ファンタジー]
R15残酷な描写あり
最終更新日:2020年11月14日
シリアス ダーク 男主人公 西洋 近代 竜 悪竜 ドラゴン 竜退治 ドラゴン退治
読了時間:約5分(2,207文字)