重なるべきではない世界が重なった世界。
この世界で人間は『人ならざる者』に対して、『弱者』であり『強者』であった。
『人ならざる者』の一つである『魔術師』に対して、人は強者である。
人知を超えた力で、万物の法則を捻じ曲げた創造を成す魔術師たちではあるが、霊獣に対しての免疫が弱く、霊獣から傷を受ければ生死に関わる。そのため魔術師は、己たちの能力を提供することで、人間の庇護を受けることでその命を繋いでいた。
もう一つの『人ならざる者』である『ジン』に対して、人は弱者である。
ジンと呼ばれる種族は、人間を捕食する。
正しくは人間の脳を喰らい、脳を失った人間の肉体を死せる奴隷として支配する。
ジンに脳を喰らわれ、感情を失った人間は、朽ちて土に戻ることも許されず、自分を食い殺したジンが死ぬ日まで、己を喰ったジンの奴隷として働かされる。
だが人間に対しては強者であるジンは、魔道士に対しては弱者である。
魔道士たちの創造の魔術に、ジンは欠かせない材料であるからだ。
人間・魔術師・ジン。
その三種の種族は、戦いながら微妙な均衡を保っている。
そんな世界である城の領主を務める『竜騎士』と『青藍の魔女』の、恋愛ファンタジーです。