ここ最近、とある泥棒が世間を賑わせていた。
彼らは人を傷付けない、殺さない。人助けの為に盗みを働くのだ。
例えば政治家の賄賂を盗んだり、暴力団から盗んだ拳銃を警察に届けたり、銀行強盗から武器一式を盗んでみたり、ふらっと姿を現しては消えていく。しかもその姿を追ってみれば、泥棒とは何の関係もない痴漢犯や詐欺犯、カツアゲの常習犯だったりする。
更に警察が把握していない奴らばかりなのだから、メディアでは「正義の味方」などともてはやされていた。
そして、彼らはまた今日も盗みをはたらく。
追っ手をひらりとかわし、余裕の笑みを浮かべ――まるで漫画や映画の中の大泥棒のように。