この物語は、世界を救わない。ただ、ひとつの腕輪と槍と少年である。遺物は語らず、獣もまた沈黙する。名もなき男ヴォルトが拾ったのは、呪われた腕輪を身に着けた少年リオだった。助けたのではない。取引だった。ただそれだけの始まりが、終わらぬ旅になった。男は槍を携え、言葉を削り、必要なときにだけ動く。少年は最初、荷物だった。やがて動き、盗み、交渉し、肩を並べるようになる。それでも男は語らない。感情を晒すこともない。ただ戦い、守り、火を起こす。その背中を見て、少年は選ぶ。「俺はこの人と行く」と。血も信仰も通わぬこの時代で、語られぬ絆が確かにあった。腕輪は少しずつ少年を蝕み、その力に世界の残滓が蠢き始める。だが彼らは振り返らない。理由も使命も口にしない。ただ、生きるために進む。今日も、何も語らぬまま。
作品情報
ハイファンタジー[ファンタジー]
残酷な描写あり
最終更新日:2025年07月15日
ネトコン13 集英社小説大賞6 123大賞6 スピアノベルス大賞1 パッシュ大賞 シリアス ダーク トラジャーハンター 呪われた腕輪 槍使い 沈黙の絆 無口主人公 遺物探索 少年の成長
読了時間:約26分(12,520文字)