作品一覧全3件
代表作 連載 26エピソード
彼には、肩書きも勲章もなかった。ただ、毎日を黙々と過ごし、誰より早く作業台に立ち、誰より遅くまで工具を握る──それだけの男だった。藤崎優司、十九歳。高校を出て、民間の整備区画に就職した無名の整備士。目立たず、喋らず、群れず。ただし“手だけは正確”だった。声高に夢を語ることはなかったが、“技術”という言語で、彼は宇宙を見ていた。そしてある日、彼は“試す”ことにした。自分の手が、どこまで通用するのかを。世界中の若者たちが挑む、最難関の宇宙飛行士選抜試験。整備技術枠の狭き門を、彼は名もなきまま、ただ“手の仕事”で通過した。これは、奇跡の物語ではない。派手な才能も、都合の良い運命もない。ただ、信じた技術と、積み重ねた感覚だけを頼りに、“旅”に加わった無名の男の記録。選ばれし者たちはまだ知らない。その先にある世界が、“重さ”という名の意味を持ち始めていくことを──
作品情報
ハイファンタジー[ファンタジー]
最終更新日:2025年07月19日
ネトコン13 集英社小説大賞6 123大賞6 スピアノベルス大賞1 パッシュ大賞 ダーク 男主人公 ダークファンタジー 重厚 異星 無能力主人公 整備士 書籍化希望 クラフト 宇宙飛行士 読了時間:約226分(112,904文字)
連載 6エピソード
この物語は、世界を救わない。ただ、ひとつの腕輪と槍と少年である。遺物は語らず、獣もまた沈黙する。名もなき男ヴォルトが拾ったのは、呪われた腕輪を身に着けた少年リオだった。助けたのではない。取引だった。ただそれだけの始まりが、終わらぬ旅になった。男は槍を携え、言葉を削り、必要なときにだけ動く。少年は最初、荷物だった。やがて動き、盗み、交渉し、肩を並べるようになる。それでも男は語らない。感情を晒すこともない。ただ戦い、守り、火を起こす。その背中を見て、少年は選ぶ。「俺はこの人と行く」と。血も信仰も通わぬこの時代で、語られぬ絆が確かにあった。腕輪は少しずつ少年を蝕み、その力に世界の残滓が蠢き始める。だが彼らは振り返らない。理由も使命も口にしない。ただ、生きるために進む。今日も、何も語らぬまま。
作品情報
ハイファンタジー[ファンタジー] 残酷な描写あり
最終更新日:2025年07月15日
ネトコン13 集英社小説大賞6 123大賞6 スピアノベルス大賞1 パッシュ大賞 シリアス ダーク トラジャーハンター 呪われた腕輪 槍使い 沈黙の絆 無口主人公 遺物探索 少年の成長 読了時間:約26分(12,520文字)
短編
「米弾」―――それは、炊きたての米を詰めた特殊な弾丸。木曽川の中洲、岐阜と名古屋が誇りと伝統を懸け、米を撃ち合う戦いが始まる。名古屋代表・黒岩剛造。言葉より行動、合理より信念。米弾ショットガンを手に戦う男。迎え撃つは、岐阜の藤原夫妻。土と風を読み、米を活かす老農夫婦。戦いの中で削られるのは体力ではなく技と魂。激突の果て、わずか0.2秒の差が勝敗を分ける時、男は立ち尽くす。──本当に炊き上がっていたのは、米か、それとも覚悟か。弾に込めた想いが、新たな季節を告げていく。
作品情報
ローファンタジー[ファンタジー]
最終更新日:2025年07月08日
ネトコン13 集英社小説大賞6 123大賞6 スピアノベルス大賞1 パッシュ大賞 老兵は死なず 読了時間:約17分(8,104文字)