「人」と「人間」を区別するなれば。それは心在る者を「人」、心無き者を「人間」と私は定義する。 　故に私は「人」を棄て、「人間」に昇華したいと──しなければならないと、切に願う。 　私の心が、悪意の沼に淀んでいたとしても。 ※無数にある一つの可能性。人の意味を綴る物語。

　とある異世界ファンタジーな街に、一人の男が舞い降りた。異世界に恋い焦がれ、願い続けた夢を現実のものとした彼であったが、その世界での出来事は色々と想定外で、思い描いていた夢とはかけ離れている。 　そんな彼とその他諸々が繰り広げる、異世界でのお話。

　僕の父は剣術の師範であった。幼い頃からその姿には憧れを抱いており、小学生にもなれば稽古をつけてもらうようにもなった。 　しかしある日、「ゲーム」という、甘い蜜を味わってしまう。その知らない世界に魅了され、高揚感そのままにのめり込む僕。 　だが、気付けばそこはゲームのような「異世界」。しかも、そこは魔法一強の世界で、剣を扱う者は限られたごく一部であった。

VRMMOにおいて最強とは。大抵は圧倒的な財力に物を言わせた、課金装備の数々だろう。他に候補をあげるとしたら、プレイヤースキル、運……。だがMMOである以上、ソロでは絶対的に攻略不可能な難敵が数多といる。難敵でなくとも、数で押されてしまえば厳しい。しかし、複数人なら。複数人で完璧な連携プレーができるというのなら。重課金装備で固めたプレイヤーなんて、難敵なんて────打ち倒せる。勝てないなんて事は、無い。