平凡な私立高校に通う高校三年生の早織は何の前触れもなく未来視の才を得た。しかしそれは夢で未来の出来事を覗き見ることができるが、それを思い出せるのはきまって全てが終わったあとであった。避けがたい未来(プロヴィデンス)を見るだけの、全く無益な能力だった。ちょうどその頃、早織の住む西要町では連続通り魔事件が始まった。
ある日、親友の顕と帰宅していたとき、早織たちは通り魔に襲われた。顕は鋭利なナイフで刺され、一命はとりとめたものの重症だった。通り魔は逃げ、顕は笑わなくなり、ただ無傷なだけの早織が残された。知っていたはずの未来を変えられずに早織は失意に沈む。
しかし、担任で白い魔女とクラスメイトから呼ばれているフミ先生にプロヴィデンスの夢のことを打ち明けたことをきっかけに、自分のすべきことを考えるようになった。
「未来が現実になる時にしか、その未来の存在に気が付けないなら、未来を決めるのは自分の行動なんだと思う。誰も知らない未来ならいくらでも変えられる。プロヴィデンスなんてものは、ホントはきっと存在しない。これまでのあたしはプロヴィデンスなんて大仰な名前を言い訳に、ただ逃げていただけなんだ」早織は決意を固め、通り魔を追うようになる。
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青春 サスペンス 探偵小説 予知夢 シリアス 運命
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