抜け出せる場所が欲しかった。自分なりに頑張っても、なかなか上手くいってくれないから。そんな自分なんて好きになれるわけがない。そんな自分から解放される場所が、すぐ隣にあるとは思わなかった。
そんな世界があってくれたのがあの時、本当に、本当に嬉しかった。わがままなくらい寄り添ったと思う。望んだ通りの自分の姿へ生まれ変わらせてくれる。自分を好きになってくれる人がいてくれる。苦手なことが得意になって、それを思う存分発揮することもできた。大人数で貶(おとし)めてくる奴らを蹴散(けち)らすことだってできた。思いがけない未来の成り行きが、望み通りになってくれたおかげで。代償のいらない魔法を使ったかのように、記憶が材料になってくれたおかげで。
だから今は、もう十分だと思えた。
寄り添って失ったものもあるけれど、寄り添いながら現実で、頑張ってこれたから出会えた人がいた。
その人と今でも一緒にいられる、い続けることができる。だから嬉しくてたまらない。
だから許せない。今まで寄り添ってきた、その場所を餌(えさ)にして、脅(おど)して操ろうとしてくる奴らが。
目の前にいるそいつが、櫻(ぼく)は許せない。
この女の子は、その場所を餌にして、兄のために人柱になれと脅してくる。
僕は許さない。絶対に従ってやらない。
ここに、一緒にいたい人がいるんだ。そのみんなと一緒にいられる空間こそ、永遠に続いて欲しいんだ。
この気持ちを壊されてやりはしない。
作品情報
ノンジャンル[ノンジャンル]
残酷な描写ありガールズラブ
最終更新日:2015年11月02日
かちぬく 6 思い出 家族 SF 再現化 友達 第三の脳 チート 中学生 小学生 高校生 異世界 魔法
読了時間:約95分(47,419文字)