夕月夏樹は、中学の卒業式当日に不思議な夢を見た。 　夢の中で、「ようこ」と名乗る声と会話をし、そしてある紙に自分の名前を記入してしまう。 　そして、夏樹は目を覚ます。 　いつもと変わることのない日常。唯の変な夢。 　そう思う夏樹とは裏腹に、迅速に確実に日常は変化していった。

　八重と春樹、二人は出会い別れ再び巡り合えた。淡く切ない二人の恋。 　これは、そんな二人の十年前の物語。始まりの物語。 　幼い春樹は、白い塊を追って獣道に迷い込んだ。怖くて寂しくてどうしようもない、そんなときに永遠に続く孤独と苦しみを抱えた八重と出会う。春樹は語る、八重の苦しみを和らげるために―― 　十年後に続く絆は、この日の数時間の会話の中で紡がれた。

　人気のない裏通りを歩く二人の男女の高校生、鳥羽と沖。 　当てもなく歩く二人は、ジャンクショップを見たり、喫茶店に寄ったり。 　ちょっと変わった関係の二人が織り成す、少しシリアスなとある一日。

　八重と出会って、数日が経った。 　春樹は、八重と会う内に、少しづつ、でも確実に距離が縮まっていくのを感じていた。 　しかし、ある晩事は起こった。 　唯の思い付き、春樹のちょっとした行為で、春樹は八重との間にある大きな壁に気づいてしまう。 　そして、二人は――

　ある年の春休み。 　東春樹は、幼馴染の北野高志に強引に誘われて花見に行くことになった。 　しかし、集合した場所に行ったはいいものの高志はドタキャンする。呆れて帰ろうとする春樹は、ある少女と出会う。 　少女は、春樹の腕を引いて獣道を抜けていく。 　そして、たどり着いた場所には大きな桜の木があった。

　目が覚めると、真っ白の部屋にいた。 　来たことも見たこともない部屋なのに、なぜか落ち着く。そんな不思議な感覚を感じていると、不意に隣で知らない少女が眠っていることに気が付く。 　「ありがとう」 　ちょっとしたことで発した少女のその一言で、僕は胸が熱くなり今まで感じたことのない感覚に包まれる。そして、僕は行動する－－。 　 　 　

　日々の生活を嫌い、拒絶する私。他人を認められなくて、自分のルールで動き、考え、迷走する。そんな私の日常は、色のない灰色の光景とノイズだらけの世界だった。