超能力は当たり前の世界だった。
人々は皆、生まれる時に超能力が産声となって現れる。
そんな世界でただ一人、産声を上げずに産まれた赤子がいた。
彼は今年で高校二年生になった。いつまでも超能力が発現しないことで周りから浮き、虐められるのがこの世界のルールだと、本人も受け入れつつあった。だが。
「柏木美琴です」
この転校してきた美少女によって彼の運命は大きく変化を遂げた。
「柏木、一番後ろの席が空いてるからそこに座れ」
「いいえ」
先生にそう言い放つと、踵を返して彼の元へ駆け寄り、
「久し振りだね、お兄ちゃん」
思いっきり抱きついたのであった。
彼が動揺を隠しきれないうちに以前からの顔見知りで親しかったということで隣の席を獲得した美琴は、それから彼のそばを離れることは無かった。授業中に放課後、家の前まで送ってきたり、朝に出迎えてきたりしていた。ことの中心にいる彼はといえば、単純に彼女に流され続けていた。