春隣の空。
どこか哀しげな、春愁の風。
それは、君が消えた明日へと繋がっていた空。
それは、さよならが消失点のように呑み込まれていく空。
もし、いつか訪れる「さよなら」が、こんなにも涼しげなら。
それも悪くないのかもしれない。
冬荒れのあの日、僕は自殺した女性に出会った。
死者を生者の夢へと導く《ユメヒト》である僕。
死者である彼女。
僕達の出会いには、意味があるのだろうか?
僕が抱いた淡い想いに、意味はあるのだろうか?
触れ合えないのに、言葉は伝わって、心だって通じる。
けれど、生と死は計り知れないほど遠くて、有り得ないほど近い。
これは、死者を夢へと導く《ユメヒト》と、一人の自殺女性が織り成す、消失の物語。