超常的な怪物と関わるようになってから、予てより抱いていた疑問が揚子
の中で大きくなっていた。今ならこの天使から答えを得らるかもしれない。
「ねぇ死後の世界ってどうなってるの?」
「知らない。第一、私は死んだことないのだから知りようがないよ。」
意外な返答に、思わず揚子は思わず吹き出してしまった。
こと生死観に関してはヒトと天使の見解はおおよそ一致しているようだ。それが
とても可笑しく思えた。揚子の中で天使はこの世とあの世を往来するものだという
固定観念があったが、どうやらそれは偏見であったらしい。
アーミカは声を出して笑う揚子をまじまじと見つめていた。ヒトの歴史が点に見
えるほど永く生きた彼女にとってとの偶像との相違から天使に失望する人間など見
慣れた光景であるが、天使との問答に笑って返す人間は珍しい。
結局、求めていた答えは出ないままただ時間だけが過ぎていく。