摂津の国(今の兵庫県)に伝わる話がある。『白滝姫伝説』という。
昔々、絶世の美女である白滝姫に恋をした山田左衛門尉真勝は、身分差を乗り越えて彼女を娶る。しかし、彼女は貧しい山里の暮らしに体を弱め、梅雨の頃に亡くなってしまう。その後、彼女の亡くなった季節になると、彼女を祀った堂の前には泉が湧き、どんなひでりでも泉は涸れなかったという。いつしか人々はその泉を「栗花落(つゆ)の井」と呼ぶようになった。(『白滝姫伝説』)
――そして現代。高校生の藤原白滝は、不幸な死に方をした白滝姫と同じ、自分の名前が大嫌い。そんな白滝に好意を抱き、毎日気持ちを伝えてくるのが、同級生の山田真勝。あの伝説に出てくる姫の相手と同姓同名のやつなんか絶対イヤ! ……という伝説と同じ名前を持つ白滝と山田のふたりの話。
兵庫に伝わる『白滝姫伝説』をモチーフにした話です。
※あくまでモチーフにしただけですので、作者独自の解釈や改変が多分に含まれています。
※この伝説の内容や解釈には諸説あります。ご了承ください。
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