作品一覧全154件
短編
遠い昔のものを見ていると 不思議な気持ちになる午後三時の頃 夏ばかりが梅雨に隠れて通せんぼ 通りゃんせの唄が聞こえる神社の境内には 誰もいませんでした 秘密ばかりが増えてゆく大人の机には 見知らぬ外国の煙草の匣 船町の街にはいつも潮の香り 背中だけが影になって 見知らぬ人のような父の姿
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純文学[文芸]
最終更新日:2025年06月29日
夏 宿場町 街灯 旅人 お地蔵様 赤に呪われた世代 真言 読了時間:約6分(2,813文字)
短編
窓の外は夕暮れで一杯だ 夏を忘れない僕たちは 夜の神社の祠で地獄経を唱えている 夢ばかり追っていたから 早死にすることになりました 蔵の中は暗闇で満たされていて 時折木漏れ日が唄をうたう どうして明日は過去じゃないんだろう 昭和の心は常夜灯に灯り 今宵も宿場町の裏路地で 大の字で眠っている
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詩[その他]
最終更新日:2025年05月12日
夏 雲水様 夕立 陽炎 過去 懐古主義 和風 読了時間:約6分(2,688文字)
短編
夏の香りが戸棚の隙間からするから開けてみると つやつやの夏蜜柑何処から貰ったのだろう 紫陽花が雨に濡れて泣いているからそっと仏壇の線香の匂いを嗅いだ 死の香りがことりと胸に落ちてくる 梅雨の時期のさみしさはトイレの裸電球のようなものかもしれない 夕べの夢は忘れました皆トイレに流します
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純文学[文芸]
最終更新日:2025年02月15日
夏 宿場町 昭和 路地裏 人生 お地蔵様 懐かしい 過去 記憶 読了時間:約6分(2,834文字)
短編
夏の足音は微かな波の向こう 夏の概念は暗がりに転がる風鈴に日差し 玄関に置かれた洗われたばかりのサンダルに夏の神様は棲む バケツの中の金魚が恋をした相手は出目金だというから蛙の子を 家族の遺影を抱えて弟の消えた宿場町を練り歩く何処からか焦げた匂い 夏の香りを閉じ込めたあの路地裏の片隅
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純文学[文芸]
最終更新日:2024年12月19日
夏 夕暮れ お地蔵様 懐古主義 古い物 宿場町 読了時間:約6分(2,605文字)
短編
人生とは孤独なのだよと誰しもと風の旅人は言う 孤独が人に教えてくれるものもあろう 燐寸を擦って煙草を咥える旅人 宿場町はなにも答えない 夏を教えてくれるものだけが私を救い 懐かしい玩具箱の中で布袋様の根付が嗤ってる 玄関に貼られたお守りの札に赤い染み どこか奇妙な大人の世界は 魔術のよう
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純文学[文芸]
最終更新日:2024年11月21日
宿場町 昭和 レトロ 仏像 地蔵 妖しい 夏 冬 懐古 線香 読了時間:約7分(3,411文字)
短編
指先に蝸牛が這う夜 私は隠していた本音を仏壇に伝えようと 鏡の前で百面相どれが本当の私なんだろう 永遠に自分というものを見つけられないまま失踪して 古町で私のドッペルゲンガーが悪戯を 雨の日に逆立ちをすると柱時計は少し時を戻した 家守の棲む水場には小さな社を置いて ゆめまぼろし
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ホラー[文芸]
最終更新日:2024年11月10日
夏 レトロ懐古 宿場町 夜 懐かしい 昭和 ホラー詩 読了時間:約6分(2,948文字)
短編
風車が廻る風の吹く森で 炎のついた松明で神隠しの子を探すが 私は炎から目が背けられない なにもかも燃えつくす原始の灯りが そっと背中にそそり寄る夜 胎内の海で童たちが海に向かって花一匁 川の人魚は金魚を夢見る 窓辺の金糸雀は誰が殺した 幼さと無垢な殺意は いつも誰かを 何かを傷つけて
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純文学[文芸]
最終更新日:2024年11月05日
宿場町 旅人 秋 夏 懐古レトロ 郷愁 読了時間:約8分(3,502文字)
短編
廊下の隅からもういいよの声聞こえて 振り返ると花蝋燭が散らばっていた 静かに夏と秋を行き来して 冬も何事もなかったかのように紛れ込む迷宮入りの事件 泣きながら想い出を匣の中に入れて神社の裏の土に埋めたら 次の年中身がすべて櫻の花弁になっていた 宿場町の道は遠い過去へ続いている夢幻
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純文学[文芸]
最終更新日:2024年11月02日
宿場町 レトロ 昭和レトロ 和風 雨 夏 秋 懐古的 オカルト 民俗学 読了時間:約8分(3,780文字)
短編
灯りとは魔物だ誘蛾灯に虫が引き寄せられる 暗闇の中でしか語れない手紙の内容がある禁忌の便り 枕の下に闇は潜んでいる其処が地獄である証拠 櫻は夢幻、薄紅色の粉雪がまた前世の夢を見せる 夜には夏という業がアルバムの中でごとごとと言って 逃げ出さなくては此の世には慈しみという極楽があるから
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純文学[文芸]
最終更新日:2024年10月30日
宿場町 和風ホラー 和風 昭和レトロ 古民家 夏 秋 読了時間:約9分(4,145文字)
短編
夏の神社には夢が詰まっているから陽だまりを浴びに 鳥居の中は不思議な國、私は私に「あなたは誰」と聞く 遠い記憶の中で夏は境内に引きずり込まれてゆく空だけは青い 神聖な場所なのに妖しい感じがするのは何故、風に聞きたい 陽炎立つ揺らめく木漏れ日、此処は確かに此の世じゃない
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純文学[文芸]
最終更新日:2024年10月28日
和風 昭和 怪談 懐古 古民家 レトロ 宿場町 読了時間:約8分(3,884文字)