「廃墟の第一人者」――かつてわたしはそう言われていた。昨今の廃墟ブームの火付け役、その栄光はもはや遠い昔だ。そんなわたしに編集者は言う――「新たな廃墟企画を」。馬鹿な、廃墟に新旧などない。あるのは無へと帰る未来のみ。だが、若く情熱を持ったカメラマンがわたしを奇妙な場所へと連れていく。そこではうら若き美女が、客たちを廃墟へ誘っているというではないか。わたしのファンだという彼女――天城弥美は、どうやら「普通ではない」廃墟へ客と行くようだ。わたしが失ってしまった廃墟への興味、取り戻せるようなところなのだろうか。