前世は、灰色の人生。上司に媚び、同僚に嫉妬し、可愛い妹に劣等感を抱きながら死んだ私が転生したのは――よりにもよって、大好きな乙女ゲームの悪役令嬢の継母、エレオノーラだった。
待っているのは、継子を虐げた末の破滅エンド?
冗談じゃないわ。もう誰かに虐げられる人生なんて、うんざりよ!
目の前に現れた継子リリアーナは、ゲームの立ち絵よりもずっと幼く、小動物のように愛らしい少女だった。
その無垢な瞳に、一瞬だけ心が揺らぐ。……なんて、あるわけないでしょ?
その『可愛さ』こそが、私の底なしの悪意と、前世からの歪んだ嫉妬を最高に刺激するのだから!
この美貌、この地位、そして『原作知識』。全てを使い、私は決めた。
この可愛いリリアーナを、私の手で、誰もが憎悪し、軽蔑する完璧な『悪役令嬢』に仕立て上げ、華々しく断罪させてあげる。
父親の愛を奪い、友人を遠ざけ、希望を砕き、その秘めた魔法の才能すら『呪い』へと変えてみせる。
聖母の仮面の下で、私は彼女が絶望に堕ちていく様を、最高のエンターテイメントとして愉しむのだ。
これは、よくある「ざまぁ」や「逆転」の物語ではない。
これは、悪が知略の限りを尽くして善を蹂躙し、悪だけが笑ってハッピーエンドを迎える、救いのない悲劇。
リリアーナの破滅は、私の輝かしい未来のための、ただの踏み台に過ぎないのだから。
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