少し先の未来――。
進化なのか、それとも退化なのか。生まれてくる人間の新生児には、奇妙な特徴を持つものが多くなった。
その特徴とは、無性。つまり、性別を、生殖機能を持たない人間だったのだ。
性別を持たない彼らは一様に青い血を有しており、寿命も短く、また生殖本能も欠如しているため異性を求めることもない。
やがて、そんな性別を持たない新生児の出生率は徐々に多くなり、次第に世界はそんな彼らの存在を無視できなくなっていく。
そして遂に、彼らは『第三の性』通称『サード』と呼ばれるようになった。
しかし、戸籍、婚姻、倫理観。世の中の価値観や制度はまだまだ彼らを受け入れるには時期尚早であり、決してサードにとって住みやすい世界とはいえず、静かな混乱の時代であった。
さらに統計によれば、サードの出生率は年を追うごとに増加しており、このままでは生まれてくるすべての新生児がサードになる日が来るかもしれない。
そうなれば、人間の未来はない。
これは、そんな第三の性『サード』である彼らと、それを取り巻く者たちの物語である……。