齋藤と申します。 父 明の初めての子なので一明というわけで。
ご挨拶ということなので、十五分ほどお時間をいただきまして……。
ご挨拶と申しましても別段実になることは申しません。いたって他愛無いことでございます。
他愛があろうはずがございませんのでご安心を……。
仕事とボランティアに明け暮れる町工場の親父でございます。
仕事疲れを癒すために言葉をもてあそんでおる、いわば不埒者でございまして。
先日も物語の調べものをしていた折に、ひょんなことから手話に興味をもちました。
世間で通用している手話は外国からの影響が濃いそうですね。
いわば輸入品、舶来だそうです。
そんな輸入品ではなくて、古来からの純和風手話はないものかと捜していたら……
見つけてしまったのですよ。
お知りになりたいですか? 冗談じゃなく?
……ではお教えいたしましょう。
といっても、皆様すっかりお馴染みのはずですが……。
辻々に立つお地蔵さんですが、拝んだ片手はすまんの合図。
左手の指が輪になっているのはお金のことですね。
開いた手の平をひらひらさせて、ちょうだいと催促しています。
これだけで、「すまん、銭くれ」をいう意味です。
しかも! 軽く踏み出した足は賽銭をくれる相手に駆け出す用意までしています
。
一動作でそれだけを伝える手話など世界中にないと、皆様に断言いたします。
時が移り、今の日本で立派な手話が発明されました!
これこそ手話というやつです。
今日は特別に教えてさしあげましょう。
軽く右手を曲げて拝むまねをしていただきます。
行儀よくその腕を支えて……
ちょいと小腰を屈めてください。
さあ皆さんご一緒に! 手話ッチ!!
……大変失礼致しました。
カラータイマーが激しく明滅しております。速く帰らねば体が溶けるー。
どうか御贔屓に