食、少女の躰と衣装の描写に感心します。うまく言葉を選び配列している。しかも繰り返し表現は少なく、故に飽きない。
まず食。「作り置き」「重箱」「ポットパイ」「ショコラショー」「オランジェット」。すこぶる豊穣な。
次に躰。「亜麻色の髪」」「カラメル色の瞳」「白磁の肌」「長い睫毛」「整った鼻梁」「桜色の唇」「真っ白なうなじ」「眉が下がった笑み」」「デコルテ」「殺傷能力」。実に艶麗だ。
最後に衣装。「カーゴパンツ」「ニットワンピース」「梅柄の小紋」「シフォンブラウス」「ランタン袖」「スキニー」「肩だし」。着こなしが手に取るようにわかる。
これらが通底音として響き、「天子様」のイメージに収斂している。狡猾な。作者の引き出しに期待。
また時折、難読文字を用いる小憎らしさがある。「反芻」「憧憬」「嗚咽」など。「口元」ではなく「口許」、「手の平」ではなく「掌」を選ぶのは作者の矜持だろう。