レビューした作品一覧全13件
これは兄さまが闇落ちし、一人ぼっちになった白狐が、 幼女たちと家族になって、異世界で無双する物語。 「らくーち、弱いけど、すごいっ」 「よかったな、らくーちっ」 「いけっ、らくーち!」 *** 日本で力を失いつつある、社の白狐たち。 その一員である楽市(らくいち)は、兄さまがいて、お酒があれば満足で、 ゆるゆると生活していた。 でも、ある日、社が襲撃され、全てが変わってしまう。 一体、何が起こったのか。 兄さまが、仲間がどうなったのか。 主である神様は何をしたのか。 楽市には、何も分からない。 途方にくれた楽市たが、仲間の匂いがする妖しの子供を見つけ、保護する。 きっと、他にも子供がいるはず、と楽市は探し始めるが、 異質な彼女たちを異世界の住人は放っておいてはくれず……。 とても、先の気になる物語です。 そして、ちょっと抜けてる楽市がかわいい。 あと、子供たちが容赦なくて好き。
テンプレもテンプレ。断罪と婚約解消宣言から、前世の記憶がよみがえる悪役令嬢。 ですが、この作品は一味違います。 「階段からヒロインを突き落としたのは、誰なのか」  王子の婚約者である悪役令嬢が、意地と根性、話術。そして、はったりを駆使して真実を暴き出す、コメディ風ミステリー。  悪役令嬢が自身の無実を証明するために、断罪の舞台で戦う。  その姿は、まさに、裁判で戦う弁護士のよう。  ただし、自分での事前の捜査は皆無で、行き当たりばったりなコメディ風。  突如、始まる断罪に、「異議あり!」と勝負を仕掛ける主人公の芯の強さ、負けん気。  他人が提示する証拠・証言という、限られた情報の中から真実を探し出す、という難題。  そして、後がないギリギリの勝負という、スリル。  これらがとても面白い作品だと思います。  章管理されていますが、ミステリーのシリーズものを五冊、といった感じです。
量産型じゃない、古き良きツンデレ系(最近はデレしかない)
投稿日:2019年3月5日 改稿日:2019年3月10日
古き良きツンデレの定義は諸説あるようですが、この作品は「初めはツンツンとした態度だが徐々にデレデレしてくる」系です。 クールな天使様の、一線引いた他人行儀な態度が徐々に和らいでいく過程と、最近の激甘っぷりが最高です。 デレるまでの過程がとても丁寧に描かれています。 この、じれったいぐらいに徐々に変わっていく関係と、最初の淡白さがウソのような激激甘甘な二人が大好きです。 読み返すと、現状との差にニヤニヤしてしまう、二度美味しい作品です。  ランキングでタイトルだけ見たときは、ヤンデレや腹黒な女の子に惚れられて、困りながらも流される話だろう、と勝手に想像し、敬遠していたのですが。  好きな作家さんの作品だと気づいて読んでみたら、冷たくも思える優等生の笑みの裏に、警戒心が強く、傷つきやすいピュアな美少女が隠れていました。 「なに、この可愛い生き物」と、ぜひ、悶絶して欲しいと思います。
 可愛すぎるショートショート。  または、絵本。  あまりに短すぎるお話で、ネタバレせずにどうおすすめすれば良いのか迷うほど短い、ちょっとしたお話。  読み終えるのに一分もかかりませんので、とにかく、ぜひ、一読してみてください。  口元が緩むのは間違いありません。  SNSで拡散できるほど短い――と言いたいところですが、残念。384文字ありました。
「気持ち悪く、ないですよ」 新人ちゃんはキモオタさんに、卑屈ですねぇ、と笑いかけました。  食品サンプルを作る会社のバレンタイン。  制作部門の瀬良さんは、会社のみんなからは「怖い」「気持ち悪い」と遠巻きにされています。  事務の青戸さんは、彼に義理チョコを渡す役を押しつけられ、噂の彼のところへひょっこり訪問。  まっすぐな性格の青戸さんと、薄ら笑いを浮かべる、斜に構えた卑屈な瀬良さん。  お互いに「変わった人だ」と思いつつ、交流を持つようになりますが……。  キモオタのコミュ障キャラが結構リアルに描かれているのに、嫌悪感を感じさせないのがすごいです。  むしろ、くせになります。  瀬良さん、大好きです。  独特な反応をする瀬良さんの内心を思って、ニヤけてしまいますし、不思議そうにしている青戸さんも可愛いです。  前後編でサラッと読めますので、ぜひ、ご一読ください。
森の動物たちの、のんびりとした日常の一コマ
投稿日:2019年2月7日 改稿日:2019年2月10日
 冬の童話祭の企画、「逆さ虹の森」の物語。  可愛いくて優しい動物たちの、のんびりとした日常の一コマに、ものすごく癒やされます。  一話で五百文字ほどでしょうか?  形式としては一話完結型。  それが十一話で完結。  さらっと読めるのに、一話一話にすごく癒やされます。  仕事に疲れているときなどに、おすすめ。  たった数百文字で心がほっこりと暖かく、幸せな気分になる、素敵な物語だと思います。
レビュー作品 森がわらえば
作品情報
 幽霊が見える少女と、家族を殺した犯人を、必死に捜す少年。  事件の捜査を進める中、二人は互いの心を癒やしていくが、同時に殺人者の影が二人の運命を狂わせていく……。  ぶっきらぼうだけど、優しい少年と、大人びた、一途な主人公が素敵です。  悲しくて、苦しくて。それでいて、強く、優しい物語。  読んだ直後、 「有名な作家の書く、ヒストリカル(風)・ロマンティック・サスペンスかな?」 と思うような。  500pの文庫を読み終えたような。  そんな満足感をくれる作品でした。
夏休みを目前にした夜、大学生の十馬は雨の中、帰路を急いでいた。 だが、突然、夜空が裂け、美少女が落ちてくる。 ……空間の裂け目から落ちてきた人間を拾ったら、どうするのが正しいのか? 十馬はとりあえず、意識のない少女を抱え、同じアパートに住む幼馴染の元へと向かった。 不思議な力を持つ、幼馴染の出生の秘密。 なぜか十馬に懐く、謎だらけの美少女。 目的のわからない襲撃者たち。 ひと夏の物語が始まる。 主人公の十馬が、単純だけど、いつだって真っ直ぐで、優しくて。 悩む親友と少女に全力で手を差し伸べる、かっこいいヒーローだと思います。
インテリ眼鏡の、真面目で合理的な休暇の過ごし方。
投稿日:2018年2月26日 改稿日:2021年9月14日
 トップクラスの冒険者パーティーの頭脳役であるクトー。  彼は表情に乏しい、インテリ眼鏡、三十代。  数十人規模のパーティーの雑務を全て取り仕切っている彼は、ある日、仲間たちから命令され、懇願される。 「ちゃんと、休暇をとってください!」  強制的に休みを取らされるクトー。  けれども、オン・オフ関係なく、いつだってクトーはクトーのようで……。  ちょっとズレている彼の、とっても合理的な休暇の旅が始まる。
特攻部隊系令嬢が派手に暴れます
投稿日:2018年1月9日 改稿日:2018年1月10日
 転生令嬢は猪突猛進な美少女で、チートを使って大暴れ。  それをフォローするヒロインの最愛の人(モブキャラ)は、ふんわりした雰囲気の腹黒少年。共に六歳。  そんな二人が王都で起こる事件や問題を、前世の乙ゲーの情報を利用しつつ解決していく中で、ヒロインの転生の謎が明かされていくのですが……。  転生や世界の謎は、情報が少しずつ明かされる度に謎が深まり、不安を煽ります。  それでいて戦闘シーンでは、ヒロインはいつだって力技と単純明快。  ドレス姿で豪快に、走って、跳んで、爆発してと大暴れ。  そして、好きな人の前ではデレデレ、イチャイチャ。  このさじ加減が、大好きです。
お人好しで、腰の低い、影のうすい神様(主人公)
投稿日:2017年10月16日 改稿日:2017年10月18日
 八百万の神々の国、日本で神様をやっていた赤鞘。 神々の中でも力が弱く、下っ端の神様だけど、真面目で丁寧な仕事ぶりを認められ異世界からヘッドハンティング。  でも任された土地は、曰く付きの荒れ地。  一つの土地を巡って、国家規模で人間たちの思惑が錯綜するけれど……。  神様サイドも人間サイドも、とんでもない力を持った者たちばかり。  そんな彼らが走り回る中、事の中心にいる神様・赤鞘といえば、黙々と土地を整え続けます。   小心者で、お人好しな、優しい優しい神様、赤鞘。大事件が起こっている真っ最中のはずなのに、まったり、ほのぼのと物語は進みます。
お約束と決めゼリフがスゴイ
投稿日:2017年8月29日 改稿日:2017年8月29日
 二千年前の戦乱を生きた最強の魔王が、平和な現代で無双する。  何事にも動じない、穏やかで堂々とした魔王さま。周囲が好意や悪意で騒いでも、どこ吹く風。たとえ目の前に障害があったとしても、のんびり踏み潰していきます。  お決まりの展開と決めゼリフが効果的に使われていて、いつも楽しみにしています。  お約束、と分かっていてもうまく不安を煽られ、意表を付く形で決めゼリフがやって来る。これが連続しているのに、飽きさせません。  敵の策略は最後まで目的が分からず不気味で。いつも非常識(二千年前の常識?)な魔王さまの行動は読めず。驚愕と爆笑が続きます。
 現代日本でコンサルタント、異世界で冒険者という職歴を経て、「冒険者パーティーの経営相談」を始めた主人公、ケンジの物語。  エッセイで作者が「街場の冒険者を支援していく物語のはずでした」と語っていますが、ケンジが目の前の問題を一つ一つ解決していくうちに、ギルドや貴族、教会などが登場。物語の舞台は街にとどまらず、どんどん大きくなっていきます。  作者いわく「本当にこの世界の冒険者を救おうと思ったら、一体何をすべきなんだろう?」と、考えて方向転換したとのこと。  作者はコンサルタントとして、空想相手にかなり本気で、真面目に取りくんでいるように思います。(職業病でしょうか?)  コンサルタント的な思考回路と、この「本気」が面白い作品だと思います。