この作品最大の魅力は、酷く現実的で、どこか温かみのある人間関係だと思う。
序盤の本を得ようとした際の身分の壁、代用品を作ろうとした時の物理法則の壁、印刷技術を作り上げた直後の情勢の壁、これらを超えるマインや周囲の創意工夫。
家族と離れ離れにならないように頑張り、繋がりを全力で保持する一家の絆。
クーデレでヤンデレでツンデレな魔王と女神の化身の、全然甘くないのに甘い雰囲気に染まり切ったやり取り。
自重を捨て去った火種兼火薬庫に振り回され、振り回されまいと逆に振り回す喜劇的な一幕。
現実は頭の中のように上手くいかないけれど、それを乗り越える強さと、その源となる思いやりと温かみ。
個人的な見解だけど、ここまで読者の喜怒哀楽を掻き乱し、それでいて読了後の幸福感を醸し出してくれる作品は、ほとんど無いと思う。
他の人も言うように、歴史に刻まれなくとも、是非読んで欲しい作品。