レビューした作品一覧全15件
恋人とはなんぞや。   エルムグリン王国に、麗しき紫紺と呼ばれる瞳を持つ美しき姫がいる。 その姫が言い放ったのがこれである。ピンク色の怪しい本をみつめながら。 姫から王妃になったこの少女は、思い人である現エルムグリン王となった隣国ローツェンの元第二王子フィリッツに このピンクの本より授かった知識を実践していく。   山あり谷あり、ラブコメありシリアスあり、ハラハラありアマアマもあり。 為政者と少女、為政者と青年。破天荒なリルリアンナ王妃の行動で、フィリッツ王は自分の思いに気付いて行く。 周囲からせっつかれながらもマイペースに、時に焦ったり時に耐えたりしながら縮まって行く二人の距離を、どうぞお楽しみください。   安心と信頼のなななんブランド、レア物のハイファンタジーです。 あ、王妃付き女騎士のソフィアさんもお薦めですよ。
親から一方的に決められた婚約。そんな勝手に決められた運命に主人公である「僕」は抗いたかった。 でも相手はとりあえずお互いを知りましょうと、そうでなければいいも悪いもないからと、手紙でそう伝えて来た。 一先ず納得し、自分のことを嫌いになってほしいと願って文通を始めた僕。しかし、いつまで経っても文通が終わる気配はなくて。 それどころか、文通が続くにつれて、あたりまえだが互いに対する情報量は増えて行くばかりで。 そんなある日起こる事件で、僕は自分の気持ちに気付かされる。   高クオリティの甘い作品を数多く描いているたこすさんの、ちょっぴりレトロな雰囲気の単発作品。 手紙だからこそのすれ違いが、後々の展開に生かされていると言う妙技。 その妙技の光る怒涛にして秀逸なラストのやりとりは、是非読んで   黄色い悲鳴を上げたり 転げまわったり ほっこりしたり   していただきたいです。 いざ、砂糖の海へ!
とある王宮で働いているメイドさん、アーニャはおっちょこちょい。 いつもドタバタしている彼女を、厳しく指導する上司のベネットさん。彼に呼び止められると、いつも「はひっ?!」と飛び上がってしまうのです。 しかしこの、ベネットさんの厳しさには、秘めた理由があるようで。   多数の詩と小説を、えっちらおっちら右往左往しながら、それでも見事な形で見せてくださるなななんさん。 そんななななんさんの、珍しいハイファンタジー作品。   おっとりメイドのアーニャちゃんが、もう頭をワシワシなでたくなるほどかわいい。 一生懸命な姿にニヤニヤしてしまいます。 そんなおっとり愛されメイドさんの日常風景を、どうぞご堪能くださいませ。   作風はいつものように、あまあまふわふわ きゃー☆ でございますよ。
魔王がいなくなった後の魔王城。そこにあるのはその玉座。 椅子は次代の魔王が現れるのを孤独に待ち続けていた。   しかし。   現れたのは魔王ではなく猫。 一匹の猫をもてなしてしまってから魔王城は一変した。   時は流れて今。 玉座は一匹の子猫に悩まされていた。     魔王がいなくなって久しい魔王城に鎮座ましましている、魔王が座るはずの玉座。彼? の独白で語られる、魔王城の日常を描いた異色作です。 さりげなくすごいことやってる玉座さんの、能力の無駄遣いっぷりと、お前それでいいのかと突っ込みたくなる城の内装。 そしてマイペースな猫たちのかわいらしさと、子猫への玉座さんの態度は必見。 つまり。全部見所です。 とてもほのぼのニヤニヤします。 日々の清涼剤をおもとめの方は、お一つどうぞ。
一見するとドラゴンに供物を持って行くと言う、昔ながらのハイファンタジーな風景。 しかしすぐにそうではないとわかる記述が。運んでいる肉の種類がなんと、A5クラスの和牛なのである。 そんなしょっぱなから突っ込まざるをえない世界観。しかも主人公はその、和牛を受け取るドラゴン。 このグランドマスタードラゴンと言う、いかにも強者な名前の 本当に強者なドラゴンには、悩みがあった。 それは。   生肉が苦手と言う悩みである。   忘年会で、友達のエンシェントカオスドラゴンちゃんにそのことを相談すると、思わぬ方向に話が向かってしまうのであった。 こんなカオスな世界観で繰り広げられる、人間とドラゴンの交流の物語。     とりあえず、主人公のグランドマスタードラゴンちゃんがかわいい。でっかいドラゴンってことを忘れるほどにかわいいです。 癒し系ドラゴンの、そのほのぼの力をご堪能ください。
蒼い星に響くは、涼やかなる恋の音
投稿日:2018年3月26日 改稿日:2018年3月26日
彼女は別れを切り出した。 それが裏腹であるとわかっていながら。 彼女は雨をつっきった。 知らなかった涙を雨と混ぜながら。   知らないことばかりの浮世離れした女性カグヤ。彼女はこの蒼い星に一年間、任務のために滞在している。 ぼんやりとすごす彼女の前に一人、人生を変える男性が現れる。 彼と触れ合ううちに、自分の中に不明な音が鳴り始める。 涼やかにリンリンと鳴るその音は、彼女の心に呼応して音色を変える。 喜ばしく鳴るその音が、「恋」と言う音だとわからないままに、カグヤはその思いを深めていく。   温かく甘く、なななんテイスト満載の今作は、いつもと少し違います。 不穏に始まる物語。けれど彼女の結末を見た時に、ほんのりと笑顔になれます。 紡がれていく静かな恋、その空気の優しさをぞんぶんにお楽しみください。
数多くのヒーロー物を手掛けるオリーブドラブさんが放つ、これまた異色のメタルヒーロー作品。   装星。その声が響く時、全てが終わり全てが始まる。   残忍凶悪強暴脅威の狂戦士シルディアス星人。彼等は闘争を求める戦闘種族。 その帝王を打ち果たしたたった一人の少年は、優しすぎるゆえに戦闘機会に徹することはできなかった。 力(死)に怯えるシルディアス残党の少女、シンシアを救い出し組織を離反。己の正義に準ずることを決意した。 師とのお互いを知るがゆえの苦しい戦い。暖かな思いの中で、それでも それだからこそ、シンシアが出したあまりにも残酷な答え。 全てが終わった後で、少年タロウはなにを手にしたのか。見上げた青空は、彼にどう映ったのか。 彼の生き先に幸多からんことを願わずにはいられない。 タロウの生きざまを、その波乱に満ちた戦いを、どうか見届けてほしい。
冒険者パーティー、ドラゴンズレート。最強と称される彼らの中に一人、雑務を一手に引き受ける男がいた。 彼の名はクトー。そのあまりの働きぶりに、パーティメンバーは休暇を懇願するが、一向に聞き入れない。 そのため、「休暇を取ると言う任務を与える」と言う強硬手段に打って出た。 ワーカーホリックなおっさんは、仕事の空きを作るわけにはいかないため、しぶしぶと休みと言う仕事をこなす。 効率厨のくせに世話焼きで、美的センスがちょこっとズレた仲間想いのおっさんが繰り広げる、ボーイミーツガールならぬ おっさんミーツガールなハイファンタジー。 才能を生かしきれない駆け出し冒険者の少女と、まじめボケな自分のすごさに気付かないおっさんの珍道中を、かわいい着ぐるみ毛布inおっさんと飯テロを添えて、温泉に浸かりながらお楽しみください。 なお、読みふけりすぎてのぼせても当方は責任を負いかねます。
ジャンル不明のほよほよ童話。
投稿日:2018年3月9日
小説は甘く、詩は心のままにな作風の、なななんさんの不思議な話。 あらすじから既に物語が始まる異色作。 いつも毛布を抱えて走り回る、天真爛漫な女の子のほよほよさんと、それを取り巻く人達の物語。 が。これ、ただのほんわか話じゃありません。 メインの男性陣の名前がフテイキさんとジスーさん。トウコウさんなんて隠しキャラも。 そう。これは我々なろう作者のお隣さん、なろう執筆と言う事象そのものの擬人化ストーリーです。 メタ発現もまた、彼女たちにはほんわかした日常風景の一コマ。メタ発現するの主に男性陣だけど。 そんな、不思議な人達の日常風景、覗いてみませんか?
数多くのヒーロー物を手掛けるオリーブドラブさんが放つ、異色の巨大ヒーロー作品。 宇宙怪獣が存在する世界。宇宙戦闘機のエースパイロットが、その怪獣の中でもかつてない巨大さを誇る「大怪獣」と遭遇し撃破されてしまう。 気が付くと、そこは自分のことを「救世主」とあがめる女性ばかりのいる、不思議な場所だった。  巨大ヒーローどこだよ、と思うような始まり方をするこの物語。しっかりと出てきますよ巨大ヒーロー。 子供「わぁ! タイタノアだぁ!」 母親「こら、見ちゃいけませんっ!」 と、思わず言いたくなるようなのが。 かわいらしいヒロインとドキドキしてしまうような場面もありつつ、それでもその根底にあるのは「勇気」。 子供「なぁんだ、タイタノアか」 母親「あなたも、少しは彼を見習いなさい。全部をとは言わないけど」 へとかわる瞬間を、どうか皆さんの目で確かめてください。
白陽国物語、黒瑪瑙美術鑑定士は狙われる、王宮メイドはおっちょこちょい など多くのあったか甘い作品を手がけるなななんさんの、今よりもまだ粗削りな時期に開始された恋愛物。 まだガラケーが主流だったころの、大井町線を舞台に繰り広げられる、不器用な二組と こっそりもう一組の恋物語。 ちらっとなななんさん内クロスオーバーが入っているので、なななんファンはニヤリとする一幕も。 この作品で注目すべきは、恋愛模様は勿論ですが、なんと言っても居酒屋での食事描写。 お店の雰囲気まで見えるような こまやかな気遣いに、思わず一杯煽りたくなること請け合いです。 勿論、呑める人だけですよ。 他作品にはあまりない、じんわりとしみ込んで来るような、静かに広がる、それでいてしっかりと胸に残る。 そんな恋模様、いかがですか?
和俊は自分の現状が処理しきれずに、屈折した想いを抱える高校三年生。 突然そんな彼の下に、二つ年上幼馴染の彩綾が東京から帰省して来た。 子供のようで大人、でも大人みたいで子供な彩綾の意味不明差に悪態を突く和俊は、それでもちょっとした言動から妄想が膨らんでしまうほどの男子真っ盛り。 二人の関係は、一度離れて後の急激な彩綾の近接好撃によってまた接近し出して。しかし、それは月夜のベランダで決定的な変化を迎える。 彩綾の秘密に込められた苦悩と、気付かされた和俊の燻った思い。お月さまは、その全てを見通していて。二人を煌々と照らし出す月光は、はたして二人の距離を祝福するのか? ぶっきらぼうな男性の一人称に、初めて挑戦した意欲作です。
中華風はなんだか堅苦しくて難しそうだ。そう思ってはいませんか? 大丈夫。この作品には、政治的な駆け引きも大群戦闘も、術だなんだのバトルもない。 ただ、皇帝の宮で繰り広げられる恋愛模様があるだけですから。それもラブコメにかなり寄った奴が。 掃除用具入れに隠れる中華風ファンタジーを、筆者はこれしか知りません。 丁寧に描かれる三組の恋愛模様にニヤニヤハラハラし、お前ほんとに皇帝か と疑うような皇帝陛下のキャラに思わずクスリと来ること間違いなし。 筆者は描かれる皇帝の素に何度も吹かされました。勿論ヒロインたちのかわいらしさも必見ですよ。 描き出される、優しくて澄んだ空気を感じていただければ、これ幸い。 白い名の宮に花咲く色とりどりの恋模様、どうぞご堪能ください。
いつも同じ車両に乗るイケメンさんを、妄想上で彼氏にしちゃう、そんな女性がおりました。 ある日その二次元全開な妄想が、現実になって襲って来た。 自分に起こる出来事は、あれよあれよと妄想を蹴飛ばして行く。 恋心と否現実な現実に、彼女はドギマギするばかり。 神だ巫女だと巻き込まれるけど、できることがあるならば、と彼女は目覚めた力を行使する。 美しくて飲み込まれそうな、幻想的な夜の海を渡り、彼女たちは哀しみと狂気の渦を鎮めに向かう。 悲しすぎるその終焉に、彼女(巫女姫)の愛は幸せを齎せるのか。 いろんな意味で大人な雰囲気でお送りする、現代退魔恋愛奇譚。
今なお続くあの特撮作品軍へのオマージュをふんだんに盛り込みながら、「らしさ」をグイグイ魅せてくれる装殻者シリーズ第二弾。 追憶と今を絡めて転回される複雑な人間模様。拭い去れない謎を残して迎える戦いの最終局面。 謎の答えと決着に、黒き修羅たちはいったいなにを思うのか。 「強さ」と「覚悟」を軸に繰り広げられる物語。  その一方で戦闘にも手は抜かない。 ロボット物かと錯覚するほど機械的な言葉の数々。 それでもそれが、ただ硬いだけでなく彼等が機械的な戦闘者であると認識させてくれ且つ、 そのスピード感と平成日朝バイクヒーローらしさを微塵も殺さない秀逸な描写に、心鷲掴みにされること必死。 特撮好きのみならず、是非に読んでいただきたいシリーズです。
レビュー作品 黒の参号
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