気付いたらギター一本で異世界に、という衝撃の出だしの転移もの。異世界転移ものは、「転移した人間がその世界にどのような影響を与えるか」という内容が多いですが、この物語の主人公ことイッチーは音楽で世界を変えていきます。
異世界に下り立ったイッチーはひとりのエルフの少女を始め、様々な人々と出会い、自分の音楽を伝えていく、というお話。
特徴的なのが、「こっちの世界パート」が「異世界パート」の物語進行に合わせて挿入される構成で、我々と同郷である主人公側の人生背景密度が高く読み取れ、共感しやすい作りになっているところです。
シーン毎の情景説明が丁寧で非常に想像しやすく、既存のイメージに独自の由来説明を欠かさない。そのことが物語に「自覚性」を持たせています。
異世界だってこの世界と同じように地平が広がっている、そういう「世界」を求める人にオススメな小説です。