レビューした作品一覧全3件
微妙な読後感が最高な一品!
投稿日:2012年6月26日
マッチョとはなんぞや? そんな自分の中にある常識を覆してくれる作品です。 シビアな場面を無垢が故に重くせず、そして何より(マッチョに対する)愛と笑いがここにはある。 引くべきか喜ぶべきか、線引きが紙一重に仕上がっているんです。 きっと読む人の感性を刺激してくれる事でしょう。 タイトルだけで読むのを止めた人は是非一読して下さい。 当初の予想を遥かに超えた斜め上の結末に、拒絶感など吹き飛びますから。
一言でいうなら「惚れた」、この言葉に尽きるだろう。天下の傾奇者こと前田慶次郎利益がいるのだ。腕っぷしが強い?偉丈夫?確かにそれは要素として魅力の一つとは言える。しかし、そんな些細な事ではないのだ。在り方に、存在に、生き様に、男が男に惚れ女も男に惚れる、原作「一夢庵風流記」の彼が確かにいるのだ。時代物としての風味を損なわず恋姫をブレンドした結果(というより慶次が恋姫の世界に入り込む訳だが)、本格的な歴史小説には向かないが、それでも慶次郎を中心に影響を受けた恋姫原作の人物達の成長と葛藤を描き、対立を図る構図は何一つ損なわず各々の立場を魅せた。その、隆慶一郎氏の作風を彷彿させる展開はファンなら間違いなくお勧めできる一作。恋姫の人物も心の機微という意味ではより人間性を増しているので、情緒的に愉しめる辺りは見事としかいいようがない。
隠れた名作、世に立つべし
投稿日:2011年4月27日
心理描写や擬人化、展開される物語の完成度が抜群に高い作品。オーソドックな手法ながらも読み手に様々な思考を巡らせ、最後の締めまでキッチリとこなしている。老若男女を問わず、多くの方に一読して貰いたいですね。というのも作中の過程で読者を蔑にはせず、動機や行動の基幹となるもの、果てには人間(この場合、語り部となっているG)の深奥を良く掴んでいるからです。 後読は清涼感や達成感に似た感情が齎されたのは私だけでないはず。そして就寝前の一時から休憩時間の一時と手軽に読めるのも魅力の一つ。私達の日常を題材としながらも、新しい世界観を感じさせてくれるでしょう。