伯爵家のひとり息子である『リアン』は、ある日父とともに屋敷へとやってきた年下の少女、『オディール』との出会いを果たす。
寡黙で顔色の悪い彼女を、リアンは当初不気味だと感じた。できれば関わりたくないと感じてしまったが、父からの言いつけもあって、しぶしぶ彼女の世話を焼く。
問題だったのは、食事の時だ。
彼女は、リアンが先に食べたものと同じ食事以外、絶対に口にしようとはしなかった。
リアンがサラダを食べれば、彼女もサラダを食べる。スープを飲めばスープを飲む……食事の際に自分をチラチラと盗み見られることが、リアンには不気味でたまらなかったのだ。
その理由を、彼女はこう語った。
『食べていいのか分からない』、と。
自分の意志では食事すらままならない少女は、まるで翼があるのに飛び方を知らない鳥のようだ。
そんな彼女が、自ら羽ばたくまでの物語。
ふたりの行末を、ぜひともあなたの目で見届けてほしい。