レビューした作品一覧全2件
正しく、ホラー小説である
投稿日:2019年7月3日
 始める前に一つ、この作品は『うちの地元に現れたゾンビがカラッカラだった件について』『618事件 まとめ』を読むことを前提としている。どちらもサクッと読めて面白いので、ぜひ読んでいただきたい。  今作は、日の目を浴びることのなかったラノベであり、それに前作主人公が注釈をつけたものになっている。この、正直勘弁してほしいタイトルはそれゆえだ。  始まりは一人称系のラノベのような文体である。だが、途中よりそれは大きく変わる。注釈にある通り記録小説のようなものになる。  この切り変わりと文体のそっけなさが、逆に感情の生々しさを感じさせ、加えてある種の恐ろしさを感じさせる。決して描写があるわけではない。だがそれが逆に想像をさせるのだ。何か、暗い事実があったのではないかと。  まだ書き足りないが、文字数制限があるのでこれくらいにしよう。おすすめできる作品群なので、ぜひとも読んでいただきたい。  
これはゾンビ災害の回顧録だ
投稿日:2019年4月19日
 本作品は、『618事件』という架空のゾンビ災害について扱ったものだ。主人公の、要職についたとある男による、災害の回顧録である。  第一章は、ゾンビの生態や考察などを私見を交えながら書いている。まるでユニークな図鑑を読んでいるようで面白い。時折、主人公の趣味などを伺わせるのも良いエッセンスだ。  第二章は実際に当事者として関わった回顧録といったものだ。要職の立場にある主人公が、同じく要職の友人とゾンビに対して対策を打つ。淡々と処理しつつ情報を集め、万端の準備をする。行動の端々から、主人公の有能さがうかがえるが、時折観察者としての性格も垣間見える。主人公はまさに、当事者であり傍観者である。  本作品はスプラッタでもコメディでもない。タイトルなどからジャンルを読み取りにくいのはよろしくない。  しかしながら、十二分に面白い作品であるので、どうか一読してくださると幸いである。