レビューした作品一覧全4件
文学と娯楽のすばらしい融合作品です(R指定)
投稿日:2021年4月14日 改稿日:2021年4月14日
今作品は選考観念に凝り固まったような何々文学賞作品とは異なりますが、これぞ文学であると思います。 なぜならこの作品には宗教、社会、歴史、人間の精神とその変遷が描かれ、それを読んだ読者に気付きをもたらす考察を含み、さらに娯楽小説としても機能していると思うからです。 この作品はただ頭が良いだけの人が脳内シミュレーションだけで描き上げたのではなく、相当な下地となる知識と研究の上にあったものと推測します。 その一方で作者の趣味に走りすぎた感のある要素も散見されました。 確かに世界における社会の退廃の表現の一つとして"性"があるのは理解できますが、今作においてはそれが必要以上に乱れていた-または表現が派手だった-のではないかと思います。 また有能な主役級キャラが基本的に少女(女性)ばかりなのも恣意的で、男性にクズや欠けた人間が多いというのはダーク版宮崎作品のようでもあります。
主人公の業は深いです
投稿日:2020年10月22日
大枠として、悪役令嬢転生物で見せ方はそれなりに面白いと思います。ただ枝葉のことですが言葉遣いが拙いです。特に敬称の用法がおかしいです。 レビュータイトルについて、主人公の令嬢は、婚約者の王太子との婚約破棄を望み暗躍します。その王太子は確かに第一王子として育てられ当初から幼く傲慢なところが見受けられますがそこはまだどうしようもない人間というほどではありません。対となるメインシナリオ上のヒロインも勘違いが強い普通の人の範疇でした。 こうした中、主人公は王太子の方から自分との婚約を破棄させるために、王太子とヒロインを異常者に誘導し仕立て上げていきます。そしてそれがうまくいき婚約を破棄させた上で王太子とヒロインが断罪されること成功します。 しかしそも主人公は自ら二人を悪人に育て上げる必要はなかったはずです。あのゆるい王国では正攻法で婚約を回避することは可能なはずで、主人公の業は深いと思いました。
しっかりとした作品です
投稿日:2020年9月22日
一言であらわせば、古き良き時代の作風を彷彿とさせる、しっかりとした作品です。構想も、文体も、登場人物の有り様もしっかりとしています。 古き良き時代の作品に、近年流行の異世界転移物を入れたような感じです。 ”古き良き時代の”を繰り返すと批判的に聞こえるかもしれませんが、そうではありません。なろうで流行しているライトノベルは、とにかく展開が速いです。 主人公にチートがあって、作中でも他人の思惑など踏み潰すように物語が展開していきます。 それに対して、この作品の登場人物たちは、地に足をつけている登場人物たちです。その世界観のなかで、主人公のちからは天才という程度で、チートで世界を壊す存在ではありません。 このように世界観や構想はしっかりとしていますが、逆に言えば、昨今流行作品のようなダイナミックさや爽快感は減じているとも言うことはできるかもしれません。 いずれにしても良作だと思います。
唯一購入したなろう作品です
投稿日:2019年4月8日
ただ面白いだけの物語なら、投稿小説のなかにもそれなり数の作品があると思います。しかし今作はただ面白いだけではなく、文学要素を含んでいると思います。そういったところも含めて、なろうをはじめとした投稿小説発の書籍化されたもののなかで、現状では唯一、実物の本を購入した物語です。 ※辺境も同様の属性ですが、私には主人公が達観しているようで達観していないような気がしまして、少々肌に合わなかったので購入を見送りました。
レビュー作品 狼は眠らない
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