今作品は選考観念に凝り固まったような何々文学賞作品とは異なりますが、これぞ文学であると思います。
なぜならこの作品には宗教、社会、歴史、人間の精神とその変遷が描かれ、それを読んだ読者に気付きをもたらす考察を含み、さらに娯楽小説としても機能していると思うからです。
この作品はただ頭が良いだけの人が脳内シミュレーションだけで描き上げたのではなく、相当な下地となる知識と研究の上にあったものと推測します。
その一方で作者の趣味に走りすぎた感のある要素も散見されました。
確かに世界における社会の退廃の表現の一つとして"性"があるのは理解できますが、今作においてはそれが必要以上に乱れていた-または表現が派手だった-のではないかと思います。
また有能な主役級キャラが基本的に少女(女性)ばかりなのも恣意的で、男性にクズや欠けた人間が多いというのはダーク版宮崎作品のようでもあります。