レビューした作品一覧全4件
主人公幸村紫苑は省エネ男子。 省エネと言っても、彼の標榜する省エネはけっこう前向き。 後々めんどうくさくなることを嫌って、よく見て、考えて、準備もして、然るべき行動をしています。高校生男子にしてはとても大人びています。 淡白なところはあるものの他人の機微に敏く、冒頭でヒロインに謝罪しに行く素直な心根に、大人目線の私はすぐに「いい子だな」と感心しきりでした。 そんなそつのないデキる高校生の幸村くんですが、きっかけ一つでそれは見事に振り回されていきます。 自分の中に芽生えた新たな感情になすすべもなく七転八倒する幸村くんがめっちゃくちゃに微笑ましいです。 繊細な思春期男子の心境の変化が丁寧に綴られていて、展開が進むほどにのめり込んでいきます。 幸村くんの視線の先にあるものはずっと変わりません。その一途な姿に、もうニヤニヤしっぱなし(笑) じっくり読めば読むほど面白い青春活劇です!!
終わってみれば、成り上がり令嬢の物語。 ですが、あなたは見たことがありますか? 反骨精神と不屈の闘志で自身の未来を勝ち獲って行く令嬢を。 努力を続け、前のめりになって生きていく主人公の姿に、私は鮮烈な感動を覚えました。 諦めず、甘えず、逆境に立ち向かっていくセシアと、崇高な理念を胸に自己犠牲を厭わない王子・マーカスが身分の差を超えて惹かれ合っていくストーリーに、憧憬の念を抱かずにいられません。 何よりも2人の生き様が美しい。 強く気高くあるために、努力し続ける姿が本当に美しいのです。 2人を巡る波乱万丈な物語は、章毎に起承転結し、本編もまた全4章に起承転結を当て嵌めて綴られる、見応えのある構成となっています。 スリル、感動、衝撃。 書き手が求める表現のお手本の一つが、この作品に詰まっています。 未読の方は、是非ともご覧になってください。 きっと、今日を生きる力を貰えることでしょう。
この物語は、3ヵ月余りに渡って連載され、本日第200話目をもって完結いたしました。 すでにたくさんの方々が本作品のレビューをお書きになられていますので、僕の出る幕など無いとも思いましたが、最終話を読んだがために昂り荒ぶりまくっている使命感を抑えられないので、せめて誰かの目に留まって、誰かの琴線に触れて、一人でも多くの方が本作品と出会えるように祈りを込めて、レビューを書かせていただきます。 本作品のベースにあるのは、ヒロインとヒーローの死から始まる、悲しみと絶望の連環。悲恋の物語。 …のはずなのに、最新話が更新されるたび、40代のおっさんである僕がハラハラドキドキキュンキュンしっぱなし。 10代の子が恋人のためだけに生きると決意した人生ってこんなに清冽なものかと驚かされるよ。 最後に。 謎が解き明かされていくとともに言い知れぬ不安が押し寄せてくるけど、そんな時はミゲルを信じて!!
この物語は、そんじょそこらの異世界転移モノとは厚みが違う。アツさが違う。 事なかれ主義で日和見主義、社会の底辺を自負する独身中年男性の主人公が、異世界転移でチートスキルを得る。 ん?『なろう』でよくある感じ? いやいや、実際に読んでみたら『よくある展開』なんて全く無いのでご安心を。 特筆すべきはバトル描写。 単発の必殺技の打ち合い? 感情のままに雄叫び上げて突貫? そんなアホな展開は皆無。 ひたすら緻密、かつ緩急自在、それでいてダイナミック。 錯覚すらも描写する巧みで過不足ない表現が、文字通り連続していくアクションをまるで映像のように読み進ませてくれる。 物語の真の見所は、主人公のスキルがいかにしてチートになっていくのか、だ。 その過程に、人間が強くなるための、強くあるためのヒントがある。 主人公が憧れたあの人の強さに、僕も痺れてしまった。 是非、ご一読をオススメします。