レビューした作品一覧全4件
じわじわ面白い迷宮譚
投稿日:2019年1月10日
 私は迷宮物が好きです。自分でも迷宮物を書いてますし、「小説家になろう」でも迷宮物を読みあさっています。  この「迷路の迷宮」はちらと読んで放置していたのですが、最近読み直してみて、じわじわ面白さを感じてきました。  第8話「仕様漏れ」あたりか、あるいは第12話「疾風剣フェザーダンス」あたりから数話読んでみてください。  不思議な魅力を感じませんか。  矛盾もあります。  行き当たりばったりなところもあります。  それでもこの小説には、WEB小説らしい魅力が詰まっています。  作者のパブロンさんは「鋼鉄のアイ」の作者さんと聞けば、「ああ、あの!」と思い出すかたも多いはず。  文字数も、2019年1月現在時点で42万字超えと、読み応えもあります。  迷宮物がお好きなかたには、ご一読をお勧めします。
長い余韻の残る物語
投稿日:2012年11月4日
 英雄譚が締めくくられる、その最後の一節のような話である。  この物語を初めて読んだのは、十年以上前だった。  読み終わったとたん、せつなさと登場人物へのいとおしさで胸がいっぱいになった。  十年たった今も、その読後感は色あせない。  こんなに余韻の続く物語は、めったにない。  ところでこの小説は、驚くべき短さである。  物語の厚みと文字数がまるで引き合わない。  感動の深さを文字数で割って示す方法があるとすれば、ほかのどんな文学作品をも凌駕する数値をたたき出すのではないか。  そんな想像をさせる珠玉の掌編である。
 これは、面白い。  文章が巧みなわけでもストーリーが魅力的なわけでもないのに、面白い。というか、ストーリーは、ない。サラリーマンである主人公が自宅で各国料理を作ってみて、架空の?家族との対話をまじえ、感想とレシピを公表する、という試みなのだから。  何がいいといって、写真がいい。  実際に作った料理の写真を、きっちり各話に掲載しているのだ。  これがもう、プロの作ったようではないけれど、「おおっ。頑張って作ってるなあ」と思わせる写真で、素材や調理手順の説明とあいまって、匂いまでただよってくる気がするのである。  それにしても、知ったような食材でも、分量や手順が違うだけで、ずいぶん違う料理になるものだ。  異世界ファンタジーを書いているけど異世界らしい料理を思いつかない、という方には、大いに参考になるかも?
 家族でスイス旅行を楽しんでいた15歳の少年が、19歳の姉とともに異世界に飛ばされてしまう。  ワイバーンに乗るリザードマンに迎えられた姉妹は、巨人、妖精、エルフ、ドワーフなど、おとぎ話でしか見たことのない生き物に目をみはった。人間と同じ姿をした魔族と会話を試みるうちに、そこがパラレルワールドのスイスであり、ある実験の影響で転移したらしいことを知る。  少年は、元の世界に戻る方法を模索しつつ、人間の国々から迫害される彼らと交流を深め、やがて人間と魔族の戦争に大きく関わっていくことになる。  百万字を越えるファンタジー風味SF大作、ついに完結。