レビューした作品一覧全3件
 屋根裏部屋に、憧れた頃がありました。  きっかけは……やはり「まっくろくろすけ」でしょうか?  どんな家にも当たり前にある筈なのに、「危ないから行っちゃいけません!」なんて怒られて行くことができない、そんな場所。  ―――押入れをひっくり返しても、  ―――クローゼットに潜っても、  ―――駅の柱に飛びついても、  異世界に行けなかった私にとって天井裏は、何処よりも身近な非日常でした。  この物語は、そんな屋根裏部屋を舞台にした作品です。  なろうラジオ大賞参加作品ですので、千文字も無いような超短編です。  夢を叶える為に上京してきた少年が、お姉さんと出会って、恋をする。たったそれだけの作品です。  けれどそこには、数えきれないドラマがあります。  どうぞ、ご一読下さい。  屋根裏部屋を掃除が面倒な場所としか思えなくなった今になって、ふと読み返したくなるような良作です。
透明な言葉の色を探して
投稿日:2022年11月13日
 「青春」って何色でしょう。  文字どうり、カラッと晴れた空の色?  それとも、夕暮れに色づくオレンジ色?  もしかすると、どこまでも遠い……セピア色?  人の数だけある物語。  いろんな思いに色付けされた、過去という名の物語。  このお話は、そんな物語の一つを描いた作品です。  近くて遠い、あの人を見つめる……ただの傍観者。  どこにでもいる、そんな彼女の物語です。  「……やっぱり、あなたには無理よ」  あの人が最後に残した言葉には、どんな意味があったのでしょう?  彼女がずっと見つめていた、あの人は。  ヒロインだったあの人は、  モンスターだったあの人は、  どんな思いを、最後の言葉に込めたのでしょう?  どこまでも透明なその言葉に……  貴方なら、どんな名前をつけますか?  どんな、色を塗りますか?
 ―――出来損ないだと、自分を思った事はないですか?  ―――もうどうでも良いやと、諦めた事はないですか?  いっそ死んでしまえと、自分を憎んだ事は?  こんな事も出来ないのかと、嘲笑われた事は?  大丈夫だよと……同情を向けられた事は?  「私は、出来損ないだ」  こんな苦しみはきっと、ありふれたものなのでしょう。  出来損ないと自分を呼んだことがある人ならば、一度は経験する事ですから。  この物語は、そんなありふれた思いを抱えた一人の青年の物語です。  ―――救いはありません。  神様にチートを貰って、楽して生きる………そんな都合の良いお話ではありません。人によっては、不快と感じる事もあるでしょう。  この物語は……  ただどこまでも、ありふれた苦しみに真摯に向き合った物語です。  まるで心をナイフで抉り出すかのような、そんな凄みを味わいたい方は………ご一読下さい。