冒頭から主人公が抱く喪失感、虚無感が、あたかも現実で目の前に起こっているかのように描かれ、この物語は始まります。
その描写はハードボイルド小説の主人公、いわゆる孤高な男の目線から見た、どこか現実を斜めで見ているような、そんな感時を彷彿とさせます。
主人公の抱える喪失感に悪魔の如き提案をしてくる一つの連絡。
そこから広げられる、狂宴。
その果てに、この物語のミステリー、あるいはホラーの部分が展開されていきます。
それは押し寄せるような恐怖でも、謎が謎を呼ぶ、というものではないかもしれません。
しかし、私は思うのですが、人間にとっての本当の恐怖とは、一気に狂うことではなく、徐々に狂っていくその過程なのではないでしょうか。
この物語に描かれる狂気、恐怖はそういうものです。
具体的な内容は、ぜひ貴方の目でご覧になって下さい。