レビューした作品一覧全6件
不可能な恋の突破口
投稿日:2021年9月20日
 朴念仁の少年が謎めいた女と出会って、激しい恋に落ちた。謎につつまれた女の素性がしだいに明かされてゆくと、現れたのは決して越えられない険しい壁。二人が添い遂げることは運命的に不可能。だがあきらめてはいけない。不可能を突破するとばぐちは、すぐそこにある。  初々しくて、悲恋で、おかしみがあって、驚きもある、奇想の恋愛物語。
イケメンが蔓延し、侵食する
投稿日:2020年8月28日
 罹患するとイケメンになるという奇病が発生した。病気が進行するとともにイケメンも進行し、イケメンが頂点に達したとき患者は死ぬという、おそろしい病である。  主人公は不細工な男であったが、この病気に感染してしまい、徐々にイケメンになってゆく。イケメンは顔や体型にとどまらず言葉づかいや立ち居振る舞いにまで及び、主人公はわれとわがイケメンにおびえる。その身辺には、患者を隔離しようとする公的機関、さらには反イケメン団体の魔の手が迫る。主人公の運命やいかに。  本作の文章は決して上手ではなく、見るからに素人の作品である。だが私は、このあふれんばかりのバカバカしさをこよなく愛するのである。
レビュー作品 イケメン病
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加速する混乱の興奮!
投稿日:2013年1月30日
 あこがれの松原さんに告白してみごと振られた高校生の「僕」は、その直後に事故に遭って死んでしまった。だが、あの世へ向かう彼の前に謎の男が現れ、生き返るチャンスを上げようと言う。その条件とは、死ぬ一時間前に戻って告白を成功させること。はたして彼は、たった一時間で告白成功を勝ち取ることができるか?  ……という、じつにありふれた筋書きの作品です。  しかし、主人公がいろいろ画策して告白成功への道筋をつけようとしても、まわりの人々が次から次へと予想外の行動を繰り出してきます。そしてそれがいちいち理屈に合っているところがニクい。終盤のホームルームの場面など疾風怒涛の勢いで混乱が加速し、読者はめくるめく興奮の渦に巻き込まれます。ぜひあなたも巻き込まれてみてください。
レビュー作品 恋に時間を
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ナンセンス上等!
投稿日:2012年11月7日
 「きょうぼくは にほんのさいなんたんにあるえとろふとうにいってきました」という一文からはじまる、ほとんど完璧に意味不明の700字あまりの作品です。  意味不明ではあるのですが、言葉の選び方におもしろいところがあり、リズムもよく、つい何度も読み返してしまいます。私はあまりに何度も読んだせいでとうとう全文を暗記してしまいました。  この不思議体験、みなさんもいかがですか。
このズシンとくるもの
投稿日:2012年11月7日
 中学生の少年が異世界トリップ、一人の少女と出会ってその少女のために働く。  ……というきわめて平凡な筋書きの物語です。  ですが、作品の出来ばえはまったく平凡ではありません。はじめから終わりまで厚みのある文章でつづられ、そうして生み出されたさまざまなイメージのなかから登場人物たちの悩みや喜びが存在感をもって立ちあらわれてきます。  映像作品や漫画ではなく、言葉で書かれた小説を読む楽しみがここにはあります。軽く読み飛ばすのではなく、じっくり腰を据えて付き合いたい作品です。
超絶奇想ここにあり
投稿日:2012年8月28日
 二人の少女が、ジャンケンをして負けたほうが二人分のカバンを持つ、みなさんご存じのあの遊びをしながら学校から帰ります。負けた子が勝った子に、どこまでカバンを持てばいいのか尋ねると、相手はこう答えます。「曲がり角まで」。  しかし、どこまで歩いても曲がり角は出てきません。それだけではなく、この二人の通学路ではいろいろと妙な光景が見られます。いったいこれはどういう世界なのか。想像力をうんと回転させて読んでください。理解できたときにはあっけに取られること請け合いです。
レビュー作品 曲がり角まで
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