永遠に動かない体に閉じ込められた意識はどうなるだろうか。ほとんどの人は耐えられないと感じるのではないか。
映画『ジョニーは戦争に行った』で取り上げられた題材であり、また、医療が発展した結果、ALSなどの看護の現場で起きていることでもある。
この作品のヒロインは、祈りの姿勢のまま意識を残して時間を凍結される。そしてその身を嘆かず、己の行いを自省し、淡々とその場を訪れる人々を見つめるようになる。
生前の美しい姿で祈りの姿勢をとったまま静止している彼女を、人々は祈りの対象とするようになり、勝手に懺悔を始める。懺悔の内容を聞いても、彼女は怒りもせず、悲しみもせず、哀れみもしない。
凍結の最中、長い時間をかけて彼女は己の魂を浄化する。そして人々の間で彼女の悪行の記憶は薄れ、祈りの対象となっていく。
悪女から聖女への緩やかな昇華を突き放すような文章で描く愛すべき掌編。