「小説は漫画の下位互換だ」
そんな心無い言葉が飛び交うこの小説界隈。
しかし、イラストではなく活字を追うことでしか味わえない楽しさというのは、確実にある。
そんな活字を追う楽しさを教えてくれるのが、本作である。
①濁流のように押し寄せる心理描写
主人公のマグ先生は自分が何者なのかわからず苦悩に苛まれる。そんな苦悩が文字の濁流として押し寄せ、読者をたちまち飲み込んでしまう。
②流動的な情景描写
大気の動きから主人公の感覚まで、ありとあらゆるものが文字となって時を動かす。自然と脳内で文字が映像化されるような感覚。点で切り取ったものではなく、線で捉えることができる流動的な情景描写がここにあります。
文字が活きている。これが「活字」だ――そんな活字の楽しさを教えてくれる本作を読んでみてはいかがだろうか?