世の中には、あまたの魔法が登場するファンタジーが存在している。
ある作品では、自分が強者であるための力として。
また、ある作品では自分の持つ遥かな可能性として。
「魔法の本質は願いよ。」
作中のある人物の言葉だ。
私はここに、魔法、ひいてはファンタジーへの作者の深い解釈を感じた。
この作品の中で、魔法の効果は、たった10秒と、けして大きなものとは言えない。持っているからといって絶対的な力の差になるわけではないし、誰もが羨ましがる才能にもなりえない。
しかし、だからこそ、最後まで読んだとき、「"魔法"とはなにか」という問いへの作者の答えがストンと腑に落ちるのだ。
私は休日には図書館に通いあらゆる本を読み漁るほどの本好きだが、この作品は、これまでで十指に入る面白さだった。
このレビューを読んだ方にも、この作品の読後感をぜひ味わってほしい。