「寝取られました。復讐します」突き詰めれば、それだけなのでしょうか。
いいえ、この作品は、唯一無二の、名状し難い大河小説なのです。
古今東西、古典からサブカルチャーまでの五十音順百科事典のような知識と考察が詰め込まれています。
人が人を裏切る浅ましさ、信じることの力強さも、驚くほどの数の登場人物とともに、詰め込めるだけ詰め込んでいます。
本筋の話から脇にそれて大きく蛇行しているように見えますが、迷走せずに確かに前進しています。
「モンテ・クリスト伯」のような復讐譚を、「嵐が丘」のような狂気じみた人々が、「戦争と平和」のような盛りだくさんのエピソードで繰り広げられていきます。ついでに言うと、蘊蓄の投入ぶりは「白鯨」に負けていません。
物語はまだ終わる気配を見せていません。
気軽に読めるほどのライトさはありませんが、読み応えは群を抜いています。
本当におすすめです!