レビューした作品一覧全8件
「寝取られました。復讐します」突き詰めれば、それだけなのでしょうか。 いいえ、この作品は、唯一無二の、名状し難い大河小説なのです。 古今東西、古典からサブカルチャーまでの五十音順百科事典のような知識と考察が詰め込まれています。 人が人を裏切る浅ましさ、信じることの力強さも、驚くほどの数の登場人物とともに、詰め込めるだけ詰め込んでいます。 本筋の話から脇にそれて大きく蛇行しているように見えますが、迷走せずに確かに前進しています。 「モンテ・クリスト伯」のような復讐譚を、「嵐が丘」のような狂気じみた人々が、「戦争と平和」のような盛りだくさんのエピソードで繰り広げられていきます。ついでに言うと、蘊蓄の投入ぶりは「白鯨」に負けていません。 物語はまだ終わる気配を見せていません。 気軽に読めるほどのライトさはありませんが、読み応えは群を抜いています。 本当におすすめです!
街角の英雄がここにいる
投稿日:2023年7月6日
最近の我が国の火災の発生件数は、1日100件余り。 ここで起きる不幸も、残念ながら、おそらく珍しいことではないのでしょう。 しかし、中には、そのことで日常の多くを奪われてしまうことも少なくありません。 そんな残酷で不条理な世界の中で負けそうになる少女。 彼女を守るためなら迷わず行動する不器用で不安定な少年。 勇気が足りないところは、少しずつの思いやりとユーモアで補うことにして、二人は前に向かって歩き出します。 互いに心を響き合わせながら、人間として成長するその姿が胸を打ちます。 周囲の大人や友人たちの名バイプレイヤーぶりにも着目してください。 念の為に申し上げると、人前で読むのは避けておいた方がよいでしょう。 私は、思わず涙がこぼれてしまったので…
大人はだいたい後悔でできている
投稿日:2022年12月19日 改稿日:2022年12月19日
ネタバレ注意です。 大事故を引き起こした後悔から逃げ出した主人公。 その事故の犠牲者の少年。 主人公のかつての恋人。 新たな環境で主人公を支える少女。 主人公を失って自分を責める元雇主。 大人たちは、後悔を抱えて途方にくれています。 若者たちは、不器用ながらも不安と優しさでできています。 悲しい人ばかりですが、悪人は出てきません。 孤独な魂たちの行き着くところはどこなのでしょう。 12月18日現在、クライマックスと思われる展開ですが、一番幸せになってほしいのは、無愛想なのに思いやりの深い同級生の女の子。
 パーティから追放された主人公が、追放した当の勇者、聖女、賢者たちから慕われていた!  一番のポイントは、主人公たちの魅力です。飄々としながら、熱く荒々しい魂を悲しい過去と運命とともに隠し持つガリウス。一途さと愛すべき変態さを隠そうとしない三人娘の可愛さ。追加のパーティメンバーも、可愛すぎる魔犬やポンコツくノ一と有能なのに個性的。  二番目のポイントは、大小問わない仕掛け、ギミックの数々。背景の設定、戦闘の技術などの工夫が読んでいて飽きることがありません。  三番目のポイントは、文章の味わいです。キャラクターの個性が際立ち話者が誰かすぐわかる会話。ちゃんと状況や行動をわかりやすく書き出す地の文。  追放されたおっさん冒険者と美少女パーティという定番メニューをいただこうとしたら、素材の生きの良さ、調理の腕の確かさ、味付けや盛りつけの独創性にうならされる逸品です。是非読んでみてください!
異世界帰りというジャンルが作られつつあるように見えます。 望まずに得た力を使って痛快な活躍をしたり、復讐を遂行したり面白いですよね。 だけど、本作はちょっと違います。異世界から連れられてきた剣士、剣姫、魔王。異世界から帰ってきた聖女、勇者。ついてきた女神。皆が異世界での経験で傷つき、愛にもがき苦しみます(勇者1名ほどを除く)。 戦場から帰ってきた戦士が日常で苦しむ姿は痛々しいものがあります。 剣士アルトへの失った愛と後悔に苦しむ元剣姫・岬霞。サキュバスという生まれと兄アルトへの愛に苦しむ元魔王・鶴野杏。ミザリーへの友情とアルトへの愛情に板挟みになっている元聖女・川上愛花。 魅力的な登場人物たちが悩んだり、思いやったりする姿は、読んでいて痛々しく、胸を打ちます。 平易な文章なのに、力強く訴えてくるものがあります。是非読んでください。
レビュー作品 悪い奴は誰?
作品情報
青春の痛みと喜び
投稿日:2021年1月25日
 タイムループという舞台設定を忘れて、登場人物たちが目の前の問題に取り組み、解決する中で、悩みや喜びを分かち合う姿に引き込まれます。  そのうち、この心地よい世界が好きになることでしょう。  そして、迎える運命……  本当に良作です。  ただし、後を引くことは間違いありません。  軽々しくお勧めするのではなく、覚悟と責任をもってお勧めする逸品です。
ブラック企業と艶笑と感動。そして許しと償い。
投稿日:2021年1月4日 改稿日:2021年4月1日
 どうぞ敷居は低いですよ。ブラック企業で苦労する主人公と彼を慕うギャルがちょっとエッチなドタバタを繰り返して笑わせてくれます。  ところが、この二人、とんでもない心の傷を負っています。そのトラウマと不幸の原因に二人で立ち向かいます。思わぬ高みにまで二人はたどり着いてしまいます。その姿が胸を打ちます。  敷居が低いのにいつのまにか見晴らしのいい高さまで登っていることに気づきます。人を許すことと幸せになること……  笑って、泣けて、胸が震えてくる快作です。  読まないともったいないですよ。 ————————— 本編終了後にIFルートが始まりました。心身ともに寝取られて堕落した幼馴染の償いの物語です。罪を償うこと、愛する者に尽くすことを突き詰めていきます。思いもしない遠いところまでさまよい、違う種類の感動で胸が震えてきます。必読です。
「なぁ、相棒よ。俺たちはいったい何を見ているんだい?」 「伝説の誕生だよ!」 乙女ゲームの世界に相撲道が降臨する。 人の道がすたれる時代に、令嬢の身体を借りて、今ひとつの「雷電本紀」が始まる。 悪を清め、弱者に勇気を与え、正義を貫く。 ああ、それなのにどうして笑いをこらえることができないのか! 伝説の誕生に今こそ立ち会う時だ!