レビューした作品一覧全93件
書籍版も読みました
投稿日:2025年4月20日
なろう版を読んだ段階でとても感動してレビューを書けたらいいなと思った作品ですが、既に諸兄姉の心震える数々のレビューに書き加える必要もなく。 今回ようやく書籍版を読み終えて、両方読んだ立場で推せることを少々。 自分が一人だけだと感じていると「死」は隣り合わせなのかもしれません。 主人公がひとりぼっちではなかったと気付かされる場面はなろう版を読んだ時から大好きですが、たぶんなろう版を読んで「ここをもっと書いて!」と感じたエピソードが書籍版では増えていました(心憎いぞ!)。 表紙がウェンディさんソロなところもこの作品らしいと思いましたし、扉絵がなんともまぁ……(イラストレーターさん秀逸!)。 この作品の書籍版はまごうかたなく進化版です(編集さんお手柄!)。 なろう版・書籍版共に出逢えたことに感謝します(結論:作者様凄い!)。
『空読み姫』だと判明するなり親元から引き離されて、髪色に合わせた加護を領土に与える為下げ渡され『表の花嫁』という名のお飾りの妻にされ、家柄や恋愛により選ばれた『奥の花嫁』とは異なり愛し愛されることを諦めざるを得ません。そんな国の道具が『空読み姫』。 たった十歳で貧しい領地へ遣わされた『空読み姫』リッカちゃんは、領地で大歓迎され特大の花を咲かせ特大の実を実らせます。 しかし横恋慕した王子に騙し討ちのように王都に戻されされると顕現した力はすっからかん。 能力を失った彼女本人を愛したんだから能力は関係ないと断言するヒーローに胸がすきます。 メデタシメデタシ大好きならば読まないなんて大損です!
誰のために鐘は鳴ったのか
投稿日:2024年9月9日
たぶん何度も歌ったことのある歌。 それなのに白山羊さんのお手紙が先か黒山羊さんのお手紙が先かを断言できる人は十人に一人いるのかな?とウン十年間。 周囲のせいでお返事を書きようがないからまたお手紙を書き続ける主人公たち。 祝福の鐘(?)と出会いと一目惚れの一直線。 妨害した一族の皆様に王家の鉄槌は下されるのか?などと理屈を考える前にニヨニヨ楽しんで読みましょう
一寸先を読めますか?
投稿日:2024年9月7日
読もうと決めて開いた目次の符丁のようなタイトルに目を奪われる。 読み進めるうちに頁タイトルの謎がだんだん解けていく。 前半部分の切なさ。女主人公と記憶を失った男のうたかたの恋の日々はやがて終わりを告げる。 打って変わって後半部分のどんでん返しの連続に翻弄されてしまう。 二万字に満たない字数でありながら後日談もこれ以上の詳細も不要な完成度の高さに圧倒される。。
レビュー作品 失せ恋
作品情報
タイトルの不穏さとあらすじの[聖女が国に訪れたことをきっかけに「不吉な女だ」]という記載に読む前にビビってしまったと白状いたします。 でもね。読み始めてみるととにかく軽快な文章ですいすいすい。 序盤中盤は爆笑爆笑また爆笑。 終章に向けては泣き笑い。 一気読みに程よい字数で一気に駆け抜けてきました。 ユニークなお話なのでこれ以上は何を言ってもネタバレしてしまいそうです。 皆様、楽しく読めることは保証いたします! まず読み始めてくださいませ。
一途な王子様の物語
投稿日:2024年8月7日
寝食を削って癒やすことを求められる聖女を宥めるために婚約者に据えられた王子様のお話。 余りにも過酷な労働環境のため聖女は早世してしまいがちと知った王子様は、母国のお粗末な医療体制を改善すべく立ち上がります。 クライマックスで生死の境をさまようのは? 山あり谷あり一喜一憂した挙げ句にほろりとしてしまう心地よい読後感です。 五万字少々の心を優しくしてくれる物語、これからも心が荒んでしまいそうなときに読み返していきたいと思います。
ワーカーホリックの休日
投稿日:2024年3月22日
超人じゃない?という両親のもとに育った王子。 彼は優秀なのだけれどもいくら頑張ってもとても彼らには及ばないと思い込んでいる。いつしか無理が重なり過労死寸前で虚無の沼に嵌まり込んでしまっている。 幼少時は王子の遊び相手に選ばれていた令嬢。いつしか声がかからぬ日が訪れ彼との縁が切れてしまったはずだった。 令嬢を王子の「教育係」に抜擢した王たちの狙いは何だったのか。 優秀な令嬢は王子の嵌っている沼にすぐに気付く。 周囲の何倍も真面目な彼らの初々しい歩み寄り。 不快な人物も出来事も登場せず、それでいて読者の心をつかんで離さない。そんな珠玉の物語。
”Every Jack has his Jill."
投稿日:2023年12月11日
ぶっちゃけた話、御託はいらない、ただ読んでほしい、なのです。 主人公は伯爵家五人兄弟の真ん中。 父親が持つ爵位は四つ。 彼がヤンデレで縁談十二連敗中の伯爵家の跡取り娘との婚約を決意するのが発端。これで銘々爵位に与れるよね、と。 愛が重い者同士で気持ちが安定した婚約者が愛らしい淑女に変身していくのを見て元婚約者たちがちょっかいをかけてくるのですが、そこから廻り回って王家転覆の陰謀にまで辿り着いていきます。 飄々とした主人公に肩入れして読み続けるうちに、あまり仲の良い兄弟ではなかったはずなのにいつの間にか一致団結して悪に立ち向かう彼ら皆が愛おしくなってしまいます。 その兄弟たちの「あともうちょっと!」の寸止め加減の描き方が絶妙で、読み終えてみるとその匙加減がこの作品の一番の魅力かなと思います。 主人公の懐の深さが友人も婚約者も波風あった兄弟をも呑み込んでいく様子を是非お楽しみください。
気付いたときには完結済みで、短編と位置付けるには少し多めの字数。 白状すると、読み始めるのを後回しにしていた。 大変読みやすい文で綴られ、一つずつのエピソードが幕切れに至るまで伏線となって絡みつく。 無駄は一切無し。その分読み易い。 けれども勿体なさ過ぎて一気読みをすることができない。 オマケに本体(作品)に無駄がないだけに凡人には内容紹介のハードルは高過ぎる。 これからこの作品を読もうする皆様、 可能であれば時間と日にちをかけて丁寧に読むことをお勧めする。
盲目の王女と戦で心身それも目立ってしまう顔に傷を負ってしまった騎士の物語。 生まれたときからかすかな光を感じるだけだった王女は先代の王の愚行の呪いと巷に噂されていることを知り、父王や母妃らの負い目に心を痛めて育つ。 眉目秀麗な騎士は負った傷に心も傷付きさらに愛し合っていた恋人に去られ心が荒ぶ。 二人が婚姻で出会い、既に達観していた王女と会話を重ねるうちに騎士の心が凪いでいくのを肌で感じる。 去らずにおれなかった元恋人の様子がポイントを押さえて描かれているところもとてもよい。 クライマックスは 「死した後、私の魂はきっとあの方を探すでしょう。けれど分からないのよ、どのようなお顔をなさっているのか」 「俺が見つけ出すから……大丈夫だ」 始まる前に大方の出来事は既に過ぎており淡々と綴られるこの物語はこの箇所のために書かれたのだと思う。 ティッシュの箱を用意してから読み始めるよう薦める。
レビュー作品 見えずとも
作品情報
コミカライズのお知らせがあり興味ひかれましたが、読む前のためらいは大きかったです。こちらの作者様はなかなか歯ごたえたっぷりのお話を今なろうで連載中で、しかも本作品は「ホラー」。 作者様の特徴バッチリの読み易い文章。 どんどんたたみかけていく展開。 びっくり仰天のどんでん返し。 勝手に飛び出してくる涙。 読み終えたときの爽快感。 なかなかの大作の多い作者様の作品の中では珍しく多くない字数です。 外出時を避けてティッシュの箱を抱いて読んでみませんか?
くり返しのリズムは変則三拍子
投稿日:2023年3月13日
接点のあるはずのない皇帝陛下と元孤児のパン屋の娘がタイトル通り懺悔室で出会います。 「民話等のくり返しは三度が心地よい」と昔聞きましたが、その通りテンポよく読める三度のくり返し。その三度目の前に日常の懺悔室風景を挟むところがニクい。 合い間に合い間にくすっとさせられつつも必要なことが多くはない字数にしっかり書き込まれていて、全体に流れるようにお話が進みます。 読みやすく読後の満足感タップリの作品です。
一万字足らずで生み出した奇跡
投稿日:2023年3月11日
結婚間もない伯爵夫妻の日常の物語です。 二人のそれぞれが結婚前に人生の挫折と言える転換点を迎えています。 主人公の辛い事情が過去の話としてあっさりまとめられてドロドロの「ざまぁ」に進まないのは読み手にはありがたいことです。 主人公が夫に元々好意を持っていることが明かされること。 表情に乏しい主人公のことを夫がとてつもない観察力で理解していること。 オチという言葉がしっくりくる気がする二人の距離が結び。 蛇足になりそうがちな箇所は最低限に、読者が知りたい心情はきちんと読ませてもらえたと感じさせる、一万字に満たない字数が生み出した奇跡です。
聖女は慈愛に満ちている
投稿日:2023年2月24日
999字という短編なので、内容の紹介を始めるとそのままネタバレになってしまいそうでコワイですがネタバレしないようざっと内容紹介を。 食糧難の国が召喚した聖女は気がつくと曼荼羅の中央に立っていたそうな。 未婚の王族が聖女と婚姻せねばならぬということで15歳の王子がイケニエに? 彼は徹底的に逆らっていたはずなのに聖女の心は実は王子に届いていた、というお話。 実は強烈なオチが最後に待っています。
ランキングをダダダっと駆け上がってくるけれども「悲恋」タグで読むのを躊躇していたと白状する。 衝撃。 感想はソコソコ残す方だと思うのに初めて読んだ日は一字も書けなかった。 三千字に満たない字数でこんなに深いって……。 現実に身の回りでも見かけないこともない「好きだからいじめちゃう男の子」に振り回される女の子。 女の子には味方ゼロ。 親でさえ嫌がる彼女を彼のもとに突き出す。 いじめはされた相手がいじめと感じればいじめ。 一人でも多くの人にこの作品が読まれて読んだ人が自分の行動を少しでも振り返ることを祈る。
「三度目の正直」
投稿日:2023年2月20日
定番(?)の婚約破棄から始まり、その後おバカな王子様が鉱山送りになり庶民の心持ちを経験するのが第一の人生。 第二の人生は先の人生の記憶をかすかに持ち真面目に努力するも孤児。貧しさゆえ読書すらもままならず。思いがけずも庶民の暮らしを知る相談相手として一度目の人生の婚約者に仕え、馬鹿王子(つまり一度目の自分)に暴行を受けて死んでしまう。 さて三度目。再度一度目と同じ王子様として生まれる。もう反省しかない。婚約者と向き合おうとしていきなりの一目惚れ。ただただ愚直に愚直に誠実に誠実に。 そして冒頭の婚約破棄の日の出来事で婚約者よりもっと読者は泣けてしまうはず。 その後についての記述はコンパクトだけれども、読者が知りたかったことがぎゅっと詰まっている。 読み終えて幸せに浸りたい方は是非読んでみてほしい。
「仕合せという結婚」の主人公の姉の物語。 姉編は愚か過ぎた自分に気づき始める様子が胸に迫りました。 自分だけ両親から偏愛される典型的な姉妹格差を当然のものとして育った華やかな姉娘。 何でも自分の思い通りになる訳ではない現実に直面し完膚なまでに叩きのめされても非を認められず、長い時間をかけてようよう両親と自分の異常さに気づく姉娘。 遅すぎた妹への罪悪感、冷静に支えてくれる夫の存在に寄りかかっていく様子、妹に似てしまった娘への複雑な思い、毒親への嫌悪、変わらぬ友人、などなど真に迫る作者様の筆運びについついのめり込んで一気読みしてしまいました。 全てを解決して大団円とはいかないまま「これにて終了です。」となったことで長く余韻を引きます。
レビュー作品 咲く花の色は
作品情報
「たった一人の平民の女生徒を高位令息五名が取り囲み、クッキーを強奪し次回も持参するよう強要した。 そのクッキーは市販品を買う経済的余裕が無い為の手作り品。 平民は高位貴族からの声掛けは拒否しづらいものであり、絡む行為は迷惑行為であると心得よ。」 以上、朝から各教室に響き渡った学園長の放送内容。 迷惑行為を行ったのは王太子とその側近。 口先では謝罪を申し出つつもモテ男と自負する彼らは自らの行為を迷惑行為だと微塵も自覚していない。 彼らの鈍感さは女の子一人が五人もの男に取り囲まれる恐怖など全く思いをいたしていないのだろう。 こんな彼らが指導者となる国には住みたくないなと余計事まで考えずにはいられない。 四千字足らずの短編だが「山椒は小粒でもピリリと辛い」そのもの。
未来を変えた魔術師
投稿日:2022年8月30日
亡き祖母から結婚相手を指定され求婚するも見事に振られてしまった公爵閣下。 彼が祖母から受け継ぎ週末だけ開いている魔術師の館に彼を振った伯爵令嬢が弟子入りしてきます。 恋愛に不慣れな二人がすったもんだの挙句大団円に至るまでを単純に楽しんで読んでいたのですが。 最終章でひっくり返されました。 大魔術師であった祖母が何故二人の出会いを演出するに至ったか、かすかな希望に向けての布石が優しい目線で語られます。 終章直前までは女主人公の不器用さドンクササを大いに楽しみ、余韻ある終章でほんわりしてしまいます。 読み終えた読者を幸せにしてくれる物語、おすすめです。
不覚にも気づかなかったこと
投稿日:2022年8月23日
固有名詞が使われていない物語です。 実は感想欄を拝読するまで気づかずに夢中で読んでいました。 領地を襲った水害により困窮しているけれど前向きな伯爵令嬢。 国王と王太子を弑して国を簒奪した叔父の手から逃れるため母親の故国で不本意にも公爵令嬢として育てられた隣国の王孫。 目が良いという加護から彼が性別を偽っていることに気づく彼女。 耳が良いという加護から彼女が人を見る目があり教え上手なことに気づく彼。 彼は歪んだ国を糺すことを期待されていますが 「何が正しいのか、正しくないのか、私にはわかりません。私はただ、あなたに生きて欲しいと思います」 と言ってのけた彼女の言葉こそが普遍。 過不足なく読みやすい文で綴られており、しかも夏バテ中でも一気読みできる字数のありがたさ。 是非あなたの読書タイムに加えてみてください。
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