物語は、ごく目立たない文官だったロアが、祖国が滅びる2年前のその日に戻ってくるところから始まります。
祖国滅亡の時を何とか生き延び、葛藤を抱えたまま40年生きた彼が、その記憶を持ったまま。
趣味の戦の記録漁りと並外れた記憶力で、ロアは祖国ルデク王国の滅亡を回避させるために動き出します。
歴史を一気に変えれば先が読めなくなり、少しずつでは2年は短すぎる。そんなギリギリさ、状況の厳しさにハラハラします。
非常に緊迫した物語ではありますが、作品はほんわりした空気感で満ちています。殺伐としていないのです。
優しい文体が悲壮な状況を包み、緊張感がありながらも読み進めやすい軍記物になっています。
穏やかな性格の主人公ロアをはじめ、個性的なキャラクタたちのやり取りが楽しい。
そして、悲劇は一層の悲しみを、怒りはより強い怒りを穏やかさが引き立てます。
こういうギャップがまた面白い。
オススメです!