原因不明の病のせいで、女性は二十までしか生きられない。
地球とは接触の無いように隔離された月面都市。
動物も見たことのない、宇宙に暮らす少年たち。
そんな世界のなかで、結婚することになった少年の話。
前述の病があるため、若いうちの結婚がシステム化された世界の、ある少年の身の上話がこの作品だ。
少年の未熟さゆえに感じる思いや、友人や妻に対する新しい驚きなど、彼を通して見る世界が丁寧に描かれていた。
若いうちに伴侶をなくすことが、泣いて喚くような悲劇的なことではない。
そんな世界観を作品の所々から感じるのだが、それでも身を切るような寂しさや虚しさを、この世界に浸って味わえた気がする。
ゲラゲラ笑ったり、ワンワン泣いたりではなく、読み終わってなんだかモヤモヤと思わずにはいられない作品だった。
ジャンルはSFなのだが、ファンタジー好きにも、現代小説好きにも広く読んで楽しめると思う