レビューした作品一覧全9件
〝灰色の容疑者(¬_¬)〟
投稿日:2023年12月21日
 筆者の独断で、本作にサブタイトルを付けるなら〝灰色の容疑者〟しかないであろう。  心機一転、転居したヒロインは謎の視線を感じ、何者かにつけ狙われていた。  気になるのは主人公の隣人、佐竹という男性である。事あるごとに主人公を気にかけ、シチューや肉じゃがを作っては頻繁に差し入れてくれた。そして会うたび彼女に訪ねてくる――『困ったことはありませんか』と。とにかく胡散臭いくらい優しいのだ。  一方、見えないストーカーの執拗な気配は、日毎に主人公を追い詰めていく。  佳境を迎えて事件は急展開する。斯くして佐竹が敵か味方か、何者なのかは終盤に明かされる。ストーカーの正体とは? 思いがけないラストは、じんわり感動に包まれる。すべてが解った時、然しグレイの笑いが込み上げてくるのは筆者だけだろうか❔  ツヨシ氏のユーモアに触れてほしい。感動しつつ爆笑、こんな新感覚を味わえるミステリー他にない❕
レビュー作品 狙われた女
作品情報
 何故『血液型』を聞かれたのか。本作がミステリーなら、この一点に尽きるだろう  しがないセールスマンの川北は、会社のノルマに悩んでいた。何せ¥五十万以上もの高額な商品を、顧客に売り捌かなければならないからだ。  営業先を求めて辿り着いた、山奥の地。早速、村人の家に訪問すると、家人に何故か血液型を尋ねられる。川北が営業トークを披露するまでもなく、 『一番高い品を買いますよ、その代わり――』  村人の出した条件とは。生活がかかっている川北は、断れなかった。  短編ゆえ、数分で衝撃の結末が待っている。村には、とんでもない秘密があった。勇敢な読者は今一度、ここでタイトルの意味を考察してみると良い。  愛嬌はないが、愛あるツヨシ氏の名作を知ってほしい。彼の描くホラーは生温かい残酷さと贅沢な味わい、ユーモアに満ちている。  切ない、惨い、悔しい。血液型を問われた時、B型と答えていれば――
レビュー作品 村の愛玩動物
作品情報
 丑三つ時に現れる謎の女。執念を甘く見てはならぬ❗    その村では午前三時になると、自動販売機の前に、黒髪の長い女の幽霊が立つ。毎晩、次第に村人たちは恐怖に包まれていく。唯一人、真中さんは幽霊の正体を知っているようで……⁉  真中は過去、火事で嫁と娘を亡くしていた。しかし件の幽霊は、嫁と娘ではないらしい。それでも午前三時の女と真中の間には深い絆があった。  この世に生きる者が死者を諭す場面は、じぃんと感動を誘う。『帰りなさい。帰るべきところへ――』真中に弔われ、幽霊女は成仏したかに思えた。  果たして午前三時の女とは何者なのか。真中との関係は? 作者様のみ知っているが、真相は秘密だそうだ。手掛かりは作中の至るところに隠されている。  待ち受ける衝撃のラストに噴き出すこと間違いなし。ホラーの隠し味にコメディ要素が効いていて、黒い笑いがこみあげる‼  本編の鍵を握るのは真中さん――
レビュー作品 午前三時の女
作品情報
肉~っ(> <。)
投稿日:2022年7月18日
 肉料理は旨い。だが、この肉だけは遠慮したい。    主人公は幼い頃から人一倍、肉好きの少年だった。ある日、可愛い彼女を連れている宇崎を目撃する。一目惚れした主人公は宇崎から彼女を奪うため、ある作戦を企て、卑怯な行動に出るが……?  何者かに襲われ、倒れた主人公。目覚めた時、信じられない光景が広がっていた。急展開に目が離せず、呼吸を忘れて読み耽ってしまう。  本作の魅力、注目すべきは何と言っても宇崎という男だ。親切で面倒見良く、陰湿で執拗な彼の性質を、女性的だと感じるのは筆者だけだろうか。  因果応報。まさに本編の主人公に当てはまることだ。とは言え、この結末は残酷すぎやしまいか。三食昼寝付き。しかし死より残酷な拷問とは何か? 愛する女を奪われた男からの報復とは――? 度肝を抜かれる結末を、恐怖のどん底を、たっぷりと味わってほしい。  肉料理は旨い。だが、この肉だけは食べられまい――
今宵、テントの中で誰かが死ぬ
投稿日:2022年4月28日 改稿日:2022年4月29日
 ざまぁみろ。読後の筆者は腹黒い笑みを浮かべることになる。  嘗て凄惨な殺人事件があった曰く付きのキャンプ場へ、ヒロインは恋人の正人に誘われる。  現地に居合わせたのは、DQN男&小太り肥満女のカップルと、根暗な子連れ夫婦。彼らは何やら様子が変だ……?    ある人物の殺人計画は着々と進行していた。その夜、キャンプ場に血飛沫が舞う。  翌朝、主人公が目覚めると正人は消えていた。そして主人公を襲ってきたのは、意外な人物で……?  七人の中に潜む殺人鬼は誰か。本作の要は、二つの謀。ヒントは作中に登場しない美咲という女性。女は怖い。しかし男も残酷ね。  真っ当な登場人物が一人もいない点はコメディのよう。だが本格ホラーであり、ミステリー仕立ての展開は、ツウには堪らない逸品だ。殺意が錯綜する時、繰り広げられる惨劇とは。思いもよらない顛末と、救いようのないバッドエンドをたっぷり楽しんでほしい
きっと、騙される
投稿日:2022年3月28日 改稿日:2022年3月29日
 一体、何がどうなっている? 筆者は何度読んでも未だに真相が解らない。気になって気になって、作者様に問い質してみたほどだ(迷惑な奴め)  不可解だ。登場人物は主人公、通りすがりの女性、歩く肉まん、仁科さんの四人のみ。そして重要なのが、家の窓から見える公園のトイレ。トイレは人間の生理現象を受け止めてくれる場所だ。しかしこのトイレに入った人間は、必ずーー! いや、この先を筆者の口から言うことはできない。  どうにも不可思議だ。じぃんと涙を流せば良いのか。恐怖に戦き、ゾッとするのが正解か。或いは、意地悪くニヤケたほうが賢いかもしれない。読み手次第で真相は如何様にも変わる。何なんだ、この物語は? と首を傾げる人あれば。なるほどなぁ……と含み笑いが込み上げてくる人もいるはずだ。  とにかく、謎だらけなのだ。ただ一つ云えることは。事件の全貌が見えた時、〝胸、張り裂ける〟ような感動に襲われるだろう
ゾッとするほど笑えるんだ
投稿日:2022年1月22日 改稿日:2022年1月22日
 私《筆者》は生きるのが嫌いだ。まず面倒くさい。人類の破滅が、厭世的な私には滅法楽しみなのだ。  最初の被害者は駅のホームに突き落とされ、電車の下敷きになった。次に狙われた若者は、特異体質で一命を取り止めるが……    謎の宗教の教祖が、恐るべし魔力を持つ『あれ』の封印を解いてしまったのだ。『あれ』は人を殺す毎に破壊力が増強し、ついに教祖まで『あれ』の魔手に掛かり……!?    一方、宗教団体を調べていた刈谷が何者かに襲われる。犯人は逃亡、刑事の登場、てんやわんや。本格ホラーでありながらミステリーも楽しめる贅沢さよ。  無慈悲に、無差別に人の命を奪っていく『あれ』の正体とは? 一番恐ろしいのは、地球人が皆殺しにされる寸前の危機に、ごく一部の人間を除いて誰も気づいていない事だ。  人類全滅まで今か今かと、カウントダウン。嬉しすぎて、私は『あれ』に殺される日を指折り数えて待ち焦がれている
その犯人は『首』だよ
投稿日:2021年9月24日 改稿日:2021年9月24日
 首が犯人。倒叙の推理小説だと思えば、そうでもない。犯人の姿は目撃されているのに、その実態が掴めないのだ。  街の一角で奇妙な惨劇が相次ぐ。髪の長い美女が、美女の首から上だけが人間の首を食べているのだ。ムシャムシャと、ある夜は少女を。またある夜は、中年親父の頭からかぶりつく!  前代未聞の首に、霊能力者の野上が立ち向かうが、事態は思わぬ展開に。連続首喰い事件の背景に隠された、恐ろしくも哀しい因縁とは。  犠牲者一人一人にスポットを当て、じっくりと痛めつけていく手法に、ページをめくる手とニヤニヤが止まらない。何といっても作者様はホラー界のやり手。中毒性のある文章と先の読めない展開で、読者を裏切り続けるのだ。  腹ペコ美女のごちそうは生身の首。残酷なのにユニークなギャップに萌え、想像するほど楽しめる。  今夜も一人の男が餌食になる。  謎の首、彼女の正体はまだ、筆者にも解らない――
レビュー作品 さまよう首
作品情報
 時にクローズドサークル・ホラーの名作は、『そして誰もいなくなった』を凌駕する。  絶海の孤島。館に訪れた八人の男女。タダ飯食べ放題、しかも宿泊費は無料。至れり尽くせりのツアーを満喫していた彼らだが、ある日、招待客の一人が消えた。残されたメンバーは捜索するが、依然と行方不明のまま、一人、また一人と消えてゆく。謎の失踪事件は次第に、彼らを疑心暗鬼にさせ……?  シンプルゆえに先が読めない。サクサク読める短編ながら、うすら寒い不穏な気配が持続する。このイヤ~な予兆を体感できるのは、作者様ならではの技巧と持ち味ね。  余談だが、主人公のハンドルネームが面白い。放送禁止用語でも、逆さに読むことでサラリと表記できる不思議。  やがて待ち受けていた衝撃のカタストロフィに、心臓を鷲掴みにされるような恐怖を味わうだろう。そして同時に、黒い笑みが込み上げてくるはずだ。  タダほど高いモノはない――
レビュー作品 カウの島
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